”地域おこし”ではなく、面白いと思うこと、必要だと思うことを。「北海道から考える『田舎の未来』」会場レポート

Date : 2019/12/01

Shere :

北海道の人口減少や札幌への一極集中が進むなか、「田舎」のローカルプレイヤーたちは何を考え、行動しているのでしょうか。今回は道東を中心に活動するさのかずやさん、中西拓郎さん、須藤か志こさんにご登壇いただき、インタークロス・クリエイティブ・センターのコーディネーターである岡山ひろみさんをモデレーターに迎え、「北海道から考える『田舎の未来』」について話していただきました。

セッション概要及び登壇者情報はこちら

スクリーンにはWebサービス”Slido”で来場者から投稿された文章がリアルタイムで映し出され、質問をピックアップするインタラクティブなセッションが進められます。

ウェブメディアからリアルイベントへ。道東ローカルプレイヤーが地元に残す、未来の選択肢


働く地域も活動内容も違う彼らですが、「田舎」を活動拠点にしたのはそれが単に生まれ育った地元だったから、興味を持って関わっていくうちにやりたいこと・やるべきことが増えていったから、という単純な理由でした。
最初のきっかけはそれぞれですが、自分で地元の情報を集めたウェブメディアをつくることから活動が始まったそうです。
しかし、現在はウェブ上での活動よりも、リアルでイベントを開くことが多くなっているとか。その理由を、さのさんはこう語ります。

「ウェブメディアを通して人との繋がりが増えていく実感はあったんですが、ウェブメディアをみて自分でも地元で何かやろうと思いました、何かはじめましたという話は聞かなかったんですよ。やっぱり、行動に移す人を増やすためにはリアルで顔を合わせること、一緒になにかやってみることが大事だと感じましたね。」



印象的だったのは、モデレーターの岡山さんが問いかけた「それぞれの地域でどのような役割を担っているのか、これからどう活動していこうと考えているのか」という質問に対する皆さんの回答が三者三様でありながら、「地域おこしをやろうと思って地域おこしをやるのではなく、自分が楽しいと思うこと、必要だと思うことをやっている」という点で共通していることでした。

さのさんは、「政治家でもなんでもないので、役割や責任があるわけではない」としつつも、そういう立場ではないからこそできることがあると話します。

「たとえば、田舎には創意工夫が求められるクリエイティブな仕事が少ないんですよね。でもそういうところに若者が来たいとは思わないじゃないですか。だとしたら、自分たちがそういう仕事を創り出すことで、田舎を働いたり暮らしたりするのが楽しい場所にして、若い人たちに『田舎に帰る』という選択肢を残してあげたいんです。」

関係性から熱量を生みだし、地域との新しい関わり方を提案する、「クスろ」と「一般社団法人ドット道東」の取り組み



須藤さんも役割を意識せず自分たちが楽しむことが重要と考えていますが、「クスろ」という団体としては”地域との関わり方”と”活動の見せ方”について、2つの役割があるととらえています。

「まずは、離れた場所に住んでいても田舎に対してできることがあるということを見せること。私はいま情報系の大学にいますが、学んだことを活かすためには東京や札幌に就職せざるを得ないんです。卒業して地元に戻る学生は少ないですし、『田舎に帰るなんてもったいない』という価値観もあります。言わんとしていることはわかるんですが、それでも自分の仕事や暮らしを守りながら、地域と関わり続けられる方法があるということを見せたいんです。地域のために自分を犠牲にすることなく、地域を面白がることができるシステムを作っていきたいですね。

もうひとつの役割は、まちづくりや地域おこしの『きつい・苦しい』というイメージを払拭して、ふざけたり楽しんだりするということ。中西さんもおっしゃっていましたが、やっぱり実際にやっていることは泥臭く走り回ったり、苦手な事務仕事をこなさなきゃいけなかったりするんです。それでも楽しそうにして、ふざけている姿を見せることが大事だと思いますね。」



中西さんはクリエイターとして道東を走り回った経験から、地域における自身の役割について次のように話します。

「北海道はものすごく広いので、隣町のこともよく知らなかったりするのがもったいないですよね。でも、ある町で自分のやりたいことができなくて孤立している人がいたとしても、隣の町までいけばきっと価値観の合う人がいるはずです。そういう人たちが物理的距離によって分断されることなく繋がるためのハブになることが、僕の地域での役割だと考えています。」



「今年の秋に立ち上げた『一般社団法人ドット道東』で、道東のガイドブックを作るためのクラウドファンディング(*1)をやっているんです。目標金額は100万円ですが、すでに多くの方からご支援いただいて、開始から4日で達成することができました。まだ中身が何もできていない状態で、いろいろな人が手放しに応援してくれたんです。地域で少しずつ関係性を築いて、何かやれるんじゃないかという期待感を生み出して、それに対して結果で返していくという循環が作れたこと。僕は、これが『田舎の未来』だと思っています。」

(*1)...北海道の東側・道東を拠点とするフリーランスの集合体「一般社団法人ドット道東」による出版プロジェクト。独自の観点で選んだ100箇所以上の道東オススメスポットや、外部クリエイターによる寄稿・コラム・フォトギャラリーを掲載したアンオフィシャルガイドブック「.doto」を制作する。
CAMPFIRE ”道東の点をつなぐ、アンオフィシャルガイド「.doto」を出版したい!



会場には老若男女多くの方が集まり、いまも道なき道を走り続けるローカルプレイヤーたちの語る北海道の「田舎」の現実と展望に耳を傾けていました。Slidoで寄せられた真剣な質問とそれに答える登壇者の熱量を、ぜひ動画でご覧ください!


NoMaps2019 北海道から考える 「田舎の未来」
 
執筆・写真撮影 谷 翔悟
1989年、北海道札幌市生まれ。東京と北海道を往復しながら、人と暮らしにフォーカスした映像やインタビューを制作する。
21世紀の北海道をアーカイブする音声コンテンツ「SUPER SAPPORO BROS」主宰。
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