このトークセッションでは、企業が環境問題や社会問題に対してのみ扱われているSDGs(持続可能な開発目標)を、現在の日本社会全体が直面している「人材確保」という課題にフォーカスします。SDGsについて学んだ子供たちが就活生として成長した際に、彼らに選んでもらう会社になるためにはどうすべきか、2つのセッションを通して考えていきます。
開催概要および登壇者プロフィール
【session1】パーパスから導く「未来へ歩み続けられる会社」
中元秀昭(さくらCSホールディングス株式会社 代表取締役)
長谷川英幸(to.tomo)
水野雅弘 (株式会社TREE 代表取締役)
【session2】10年後も評価される“よく働きよく生きる”への向き合い方
田中邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)
佐々木大将(サツドラホールディングス株式会社経営管理グループ HR担当 採用担当チーフ)
佐藤彰悟(キャリアサークル就カフェ代表s/グローヴエンターテイメント人事次長
自社の取り組みと採用活動を通して感じたことに主軸を展開しました。
ファシリテーター|水野雅弘さん(以下、水野):
様々な企業間における業界・業種の垣根がゆるやかになっている昨今、単純にものを作ったり売ったりではなく企業同士の間を取り持ったり溝を埋めたりなど、仕事も多様になっています。SDG’sに触れた子供たちが企業を選ぶとき、そこには「パーパス(PURPOSE = 目的)」の存在意義が大きく働き、「こんな事をしてみたい」、「こんな社会にしたい」という自身の思いや考えが判断基準となりますね。
中元秀昭さん(以下、中元):
弊社の場合は、介護サービス事業、教育研修事業、人材サービス事業の3つを地域に密着して展開してまいりました。近年はさらに、海外事業、ものづくり事業、子育て支援事業なども始めています。その中でも「日本式KAIGOを世界へ」をテーマに介護事業の海外展開に力を入れております。介護業界の最も大きな課題は「介護人材の不足」です。しかしながら市場的には拡大しています。弊社でもより多くの人が介護の業界に関わり、また業界全体の貢献に繋がるよう様々な事業を行なっています。ミャンマーに日本式介護を指導する学校を設立したり、AIを用いて介護記録をつけるソフトウェアの開発などです。これらの事業・サービスを展開し、社会への「還元・支援・貢献」を行うことにより我々のパーパスが確立するわけです。
水野:仕事においても、目標に対する原動力が自分の生きていく源になり得るということですね。
中元:まさに、会社のパーパスやビジョンが明確化されていると、そこに自己実現を見出す人材に興味を持ってもらえると考えているんです。そして企業の発展と社員の自己実現は相互関係です。なので、弊社では社員同士が交流し、その中で社員自身も存在意義や成し遂げたいことを表出化させる機会を積極的に設けています。
長谷川英幸さん(以下、長谷川):
“10年後の就活世代の働く目線を考える”ということなんですが、僕は就活をしたことがないんです。採用担当として長年学生を見ていた経験や、自身がパラレルワーカーであるということを念頭において、ざっくばらんに就活について話してみたいなと思います。
僕の社会人人生の始まりは近所のユニクロのアルバイトからでした。軽い気持ちで始めたバイトでしたが、そこで10ヶ月後には店長になってしまったんです。自慢というわけでなく、いちフリーターでアルバイトだった僕を店長に抜擢してくれた上司や支援してくれた先輩方など、会社としての考え方が本当に素晴らしいなと思ったんですね。だったらそれに応えられる人間になろう、と思ったわけです。
長谷川:で、僕が今具体的に何をやっているかと言うと、色んな企業さんで人手の足りないところを補ったり、人をつないだり、とサポート的なことをしているんです。まさに人事の面に大きく関わることもあるんですが自分の人事的なアンテナにひっかかってくれた優秀な人材を、仕事ができるか?という面だけでなく社風に合うかとか、チームの雰囲気に合うか、相性や人柄など多角的に見て採用するようにしています。そういった人たちと面白いプロジェクトができたらいいなと思います。
中元:若い人を採用した後、新卒だからこういうことをさせよう、という考えはあまり良いとは思わないです。それよりもどういうことにチャレンジさせるべきか、ということに重点を置きたいと思います。弊社の場合は、やりたいことがあればそれをどんどん与えていきたいです。
長谷川:やはり場数を踏まないと育たないですから、言うなれば打率の問題なのかなと思います。打率をしっかりあげられるように、場数を踏ませてあげるのが大事ですね。
水野:今後、自分の仕事を通じていかに社会に貢献できるか?と考える若い世代は確実に増えるでしょう。同時にお金だけでない、「働きがい・生きがい」など人間らしい豊かさを求める時代が来ると思いますので、ぜひ若い世代に期待したいですね。
テーマはズバリ「10年後も評価される“よく働きよく生きる”への向き合い方」。
佐藤彰悟(以下、佐藤):
働き方の多様化に伴って、自分の考えやライフスタイルに合う会社で働きたいと考える方が増えています。会社の制度設計として、働くことと生きることは分断された関係ではなく、共にあるものというポイントを実行されている2社をお招きして事例や取り組みなどうかがいたいと思います。
田中邦裕(以下、田中):
2016年にコーポレートスローガンを作りました。それが「“やりたいこと”を“できる”に変える」というものです。第一部のセッションから「やりたいこと」というキーワードが出てましたが、これはとても重要なことだと思っています。世の中には「やれること」「やるべきこと」「やりたいこと」の3つがあると思っています。この中で、「やりたいこと」が抜けている社会・人生・会社っていうのはつまらないと思います。特に私たちは、これから伸びてくる企業が顧客であることが多いので、「やりたいこと」を一緒に作ろうじゃないか、という気持ちで仕事をすることが多いですね。
佐々木大将(以下、佐々木):
サツドラは「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」というビジョンを掲げています。店舗というお客様との接点をもちながら、いろんなビジネスを展開することで地域を大きく繋げていく役割が担えるのではないかと考えています。それに合わせて、2017年より”サツドラジョブスタイル”という、誰もが働きやすい環境を目指して様々な制度を設計しました。また、イノベーションを促すために、新規事業の提案や社内公募を活用するなど色んなチャレンジ制度も設けています。また、採用に関しても門戸を大きく広げて、多様な人材採用を実現しています。
佐々木:弊社はボトムアップが結構強くて、先ほどの”サツドラジョブスタイル”もボトムアップで出来ました。上がってきた要望や現場の声などを拾って、それにこたえるっていうのが大事な部分かもしれません。
田中:さくらインターネットも、現場から上がってきた声を人事部が全社員に共有するって仕組みがあリマス。現場から生まれた仕組みなのですけど。
佐藤:そのような多様な働き方を支援するために、両社とも様々な制度設計をされていることをうかがいました。そういった制度の導入前後で大きく変わったことはありますか?
田中:一番わかりやすいのは、離職率が目に見えて低くなりました。2016年に石狩にデータセンターが出来てから、そこの社員はまだ1人も辞めてません。それから、上司が部下に対してあまり怒らなくなったりとか。総じて社内の雰囲気が良くなったと感じています。
佐々木:外部からの目という点で変化がわかりやすかったですね。特に新卒採用の際に、各学校さんから非常に注目されるようになりました。社内でいうと、チャレンジ制度があるおかげで自己啓発に励む社員が増えたこと、自分のキャリアに対してポジティブに捉えられる社員が増えました。
佐々木:"会社のために仕事をするな"という社長の考えがきちんと根付いていることもあって、社員は会社のことを自分が育つフィールドだということをわかっています。もちろんここを巣立って行ってもいいですし。そういう思想が共有できているので、仕事がしやすい環境だからと言って自ら手を抜くというのも社内ではないですね。
田中:自由な働き方を提案することに対して、外部からの厳しい意見もあるにはあります。社内が和やかな雰囲気なので、それに飲まれるのも良くないといったような意見です。ただ、そういう人は「社員に楽をさせたらサボるもの」っていうステレオタイプな考えが染み付いてたりすると思います。そういう人の色眼鏡をはずすような成果を見せていきたいと思いますね。
執筆・写真 足立 岬(札幌市立大学デザイン学部 人間空間コース4年生)
開催概要および登壇者プロフィール
【session1】パーパスから導く「未来へ歩み続けられる会社」
中元秀昭(さくらCSホールディングス株式会社 代表取締役)
長谷川英幸(to.tomo)
水野雅弘 (株式会社TREE 代表取締役)
【session2】10年後も評価される“よく働きよく生きる”への向き合い方
田中邦裕(さくらインターネット株式会社 代表取締役社長)
佐々木大将(サツドラホールディングス株式会社経営管理グループ HR担当 採用担当チーフ)
佐藤彰悟(キャリアサークル就カフェ代表s/グローヴエンターテイメント人事次長
session1
子供たちを取り巻くこれからの社会とは?
前半は、さくらホールディングス中元さんと、to.tomo長谷川さんが登壇。自社の取り組みと採用活動を通して感じたことに主軸を展開しました。
ファシリテーター|水野雅弘さん(以下、水野):
様々な企業間における業界・業種の垣根がゆるやかになっている昨今、単純にものを作ったり売ったりではなく企業同士の間を取り持ったり溝を埋めたりなど、仕事も多様になっています。SDG’sに触れた子供たちが企業を選ぶとき、そこには「パーパス(PURPOSE = 目的)」の存在意義が大きく働き、「こんな事をしてみたい」、「こんな社会にしたい」という自身の思いや考えが判断基準となりますね。
中元秀昭さん(以下、中元):
弊社の場合は、介護サービス事業、教育研修事業、人材サービス事業の3つを地域に密着して展開してまいりました。近年はさらに、海外事業、ものづくり事業、子育て支援事業なども始めています。その中でも「日本式KAIGOを世界へ」をテーマに介護事業の海外展開に力を入れております。介護業界の最も大きな課題は「介護人材の不足」です。しかしながら市場的には拡大しています。弊社でもより多くの人が介護の業界に関わり、また業界全体の貢献に繋がるよう様々な事業を行なっています。ミャンマーに日本式介護を指導する学校を設立したり、AIを用いて介護記録をつけるソフトウェアの開発などです。これらの事業・サービスを展開し、社会への「還元・支援・貢献」を行うことにより我々のパーパスが確立するわけです。
水野:仕事においても、目標に対する原動力が自分の生きていく源になり得るということですね。
中元:まさに、会社のパーパスやビジョンが明確化されていると、そこに自己実現を見出す人材に興味を持ってもらえると考えているんです。そして企業の発展と社員の自己実現は相互関係です。なので、弊社では社員同士が交流し、その中で社員自身も存在意義や成し遂げたいことを表出化させる機会を積極的に設けています。
長谷川英幸さん(以下、長谷川):
“10年後の就活世代の働く目線を考える”ということなんですが、僕は就活をしたことがないんです。採用担当として長年学生を見ていた経験や、自身がパラレルワーカーであるということを念頭において、ざっくばらんに就活について話してみたいなと思います。
僕の社会人人生の始まりは近所のユニクロのアルバイトからでした。軽い気持ちで始めたバイトでしたが、そこで10ヶ月後には店長になってしまったんです。自慢というわけでなく、いちフリーターでアルバイトだった僕を店長に抜擢してくれた上司や支援してくれた先輩方など、会社としての考え方が本当に素晴らしいなと思ったんですね。だったらそれに応えられる人間になろう、と思ったわけです。
長谷川:で、僕が今具体的に何をやっているかと言うと、色んな企業さんで人手の足りないところを補ったり、人をつないだり、とサポート的なことをしているんです。まさに人事の面に大きく関わることもあるんですが自分の人事的なアンテナにひっかかってくれた優秀な人材を、仕事ができるか?という面だけでなく社風に合うかとか、チームの雰囲気に合うか、相性や人柄など多角的に見て採用するようにしています。そういった人たちと面白いプロジェクトができたらいいなと思います。
これから働く世代に期待できることとは。
会場からの質問を交えてのトークとなりました。人事採用の業務に関するリアルな質問には、熱を込めて回答するお二人。中元:若い人を採用した後、新卒だからこういうことをさせよう、という考えはあまり良いとは思わないです。それよりもどういうことにチャレンジさせるべきか、ということに重点を置きたいと思います。弊社の場合は、やりたいことがあればそれをどんどん与えていきたいです。
長谷川:やはり場数を踏まないと育たないですから、言うなれば打率の問題なのかなと思います。打率をしっかりあげられるように、場数を踏ませてあげるのが大事ですね。
水野:今後、自分の仕事を通じていかに社会に貢献できるか?と考える若い世代は確実に増えるでしょう。同時にお金だけでない、「働きがい・生きがい」など人間らしい豊かさを求める時代が来ると思いますので、ぜひ若い世代に期待したいですね。
Session2
信念や人生に沿った働き方とは?「働くことと生きること」
働き手と共に成長するための仕組みづくりに取り組む企業を招き、現状や少し先の指針についてディスカッションします。テーマはズバリ「10年後も評価される“よく働きよく生きる”への向き合い方」。
佐藤彰悟(以下、佐藤):
働き方の多様化に伴って、自分の考えやライフスタイルに合う会社で働きたいと考える方が増えています。会社の制度設計として、働くことと生きることは分断された関係ではなく、共にあるものというポイントを実行されている2社をお招きして事例や取り組みなどうかがいたいと思います。
田中邦裕(以下、田中):
2016年にコーポレートスローガンを作りました。それが「“やりたいこと”を“できる”に変える」というものです。第一部のセッションから「やりたいこと」というキーワードが出てましたが、これはとても重要なことだと思っています。世の中には「やれること」「やるべきこと」「やりたいこと」の3つがあると思っています。この中で、「やりたいこと」が抜けている社会・人生・会社っていうのはつまらないと思います。特に私たちは、これから伸びてくる企業が顧客であることが多いので、「やりたいこと」を一緒に作ろうじゃないか、という気持ちで仕事をすることが多いですね。
佐々木大将(以下、佐々木):
サツドラは「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」というビジョンを掲げています。店舗というお客様との接点をもちながら、いろんなビジネスを展開することで地域を大きく繋げていく役割が担えるのではないかと考えています。それに合わせて、2017年より”サツドラジョブスタイル”という、誰もが働きやすい環境を目指して様々な制度を設計しました。また、イノベーションを促すために、新規事業の提案や社内公募を活用するなど色んなチャレンジ制度も設けています。また、採用に関しても門戸を大きく広げて、多様な人材採用を実現しています。
佐々木:弊社はボトムアップが結構強くて、先ほどの”サツドラジョブスタイル”もボトムアップで出来ました。上がってきた要望や現場の声などを拾って、それにこたえるっていうのが大事な部分かもしれません。
田中:さくらインターネットも、現場から上がってきた声を人事部が全社員に共有するって仕組みがあリマス。現場から生まれた仕組みなのですけど。
佐藤:そのような多様な働き方を支援するために、両社とも様々な制度設計をされていることをうかがいました。そういった制度の導入前後で大きく変わったことはありますか?
田中:一番わかりやすいのは、離職率が目に見えて低くなりました。2016年に石狩にデータセンターが出来てから、そこの社員はまだ1人も辞めてません。それから、上司が部下に対してあまり怒らなくなったりとか。総じて社内の雰囲気が良くなったと感じています。
佐々木:外部からの目という点で変化がわかりやすかったですね。特に新卒採用の際に、各学校さんから非常に注目されるようになりました。社内でいうと、チャレンジ制度があるおかげで自己啓発に励む社員が増えたこと、自分のキャリアに対してポジティブに捉えられる社員が増えました。
佐々木:"会社のために仕事をするな"という社長の考えがきちんと根付いていることもあって、社員は会社のことを自分が育つフィールドだということをわかっています。もちろんここを巣立って行ってもいいですし。そういう思想が共有できているので、仕事がしやすい環境だからと言って自ら手を抜くというのも社内ではないですね。
田中:自由な働き方を提案することに対して、外部からの厳しい意見もあるにはあります。社内が和やかな雰囲気なので、それに飲まれるのも良くないといったような意見です。ただ、そういう人は「社員に楽をさせたらサボるもの」っていうステレオタイプな考えが染み付いてたりすると思います。そういう人の色眼鏡をはずすような成果を見せていきたいと思いますね。
取材を終えて
転職・兼業など多様な働き方のありうる昨今において、企業として従業員や社会に対しどのように貢献できるか?といった観点に基づいて展開された今回のトーク。「生きるために働く」という考えはもう古くって、「仕事はより良く生きるための要素のひとつ」だということがよくわかるトークでした。色んな企業が実施する多様な取り組みもとても興味深く、働くって楽しいのかも!と思わせてくれたセッションとなりました!執筆・写真 足立 岬(札幌市立大学デザイン学部 人間空間コース4年生)