今回は、国内のクリエイティブ系イベントを”都市型フェスティバル”と位置づけ、地方に対する都市の役割や、”都市型フェスティバル”になにができるのか、各イベントの主催者の方々にお話を伺いました。ご登壇いただいたのは、神戸のクロスメディアイベント「078」の実行委員長・藤井 信忠さん、東京のポップカルチャー&テクノロジーの融合イベント「YouGoEx」を運営するCiP協議会事務局長・高橋 竜之介さん、福岡のクリエイティブとテクノロジーの祭典「明星和楽」実行委員会の波止 紗英さん。
セッション概要及び登壇者情報はこちら都市部のイノベーションを地方に循環させるには?
アメリカ・テキサス州オースティンで開催され、音楽や映画、技術など様々な分野が集結する最先端テクノロジーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」を参考とするNoMaps。今セッションのモデレーターでもあるNo Maps実行委員会事務局長の廣瀬さんは、そのような都市部のイベントが地方に対してどのような影響を及ぼすのか、登壇者に問いかけました。
「都市部のイベントは、他の地域から人が集まることでイノベーションを起こしやすい状況になります。でも地方の側から見ると、都市部に人と熱量を吸い上げられることで、衰退が進んで町が寂れてしまう。そういうことを考えたときに、ただ都市部だけが盛り上がるイベントに意味があるのか?というのは疑問に思っているところなんです。都市型フェスティバルで起こったイノベーションを、どう地方に還元して循環させるのか、というところですね。」
高橋さんが事務局長を務めるCiP協議会が拠点としている東京・竹芝地区の埠頭からは、小笠原諸島行きの船が出航します。しかし片道24時間ほどかかることなどから、気軽に行ける場所とは言いづらい側面も。それでも小笠原諸島の素晴らしい魅力を伝えられないかということから、2018年9月にテレイグジスタンス株式会社がJTBやKDDIと組み、ロボットとVRを使った遠隔旅行を体験できるイベントを開催しました。
「東京はお金や人的リソースに余裕があるので、チャレンジすることで発生するリスクを許容する傾向にあります。だから新しい技術が発展するし、それを活用する設備も東京にできる。そういうなかで、地方へ送客をするきっかけとしての最先端技術を使ったショーケースを都市部でのイベントに置くというのは合理的だし、地方にとっても魅力的なんじゃないかなと思いますね。」NoMapsも北海道全土で開催!?
神戸のクロスメディアイベント「078」を運営する藤井さんは、アイデアを披露・実験する場は都市部のイベントでなければ多くの人に届かないことに触れつつも、実際に変化するのはそれぞれの日常や生活であることから、都市型フェスティバルの役割を次のように話しました。
「我々のイベント『078』で言えば、淡路島の農家に嫁いだ女性の団体『南あわじ農業女子』が、078に出ていただいたことから色々なメディアに拡散して、テレビ局の密着取材を受けるまでになった事例もあります。地域ならではの活動を都市部のイベントでアピールしてもらって、地域の活性化に役立ててもらう。都市型フェスティバルは、そういったポンプの役割を果たせたらいいと思いますね。」
福岡の「明星和楽」実行委員会の波止さんは、“異種交創”を探す九州一周キャラバン 「WARAVAN in Kyushu」という企画で九州一周しました。その際に、いままで行ったことのないエリアにアクセスしたことで、多くの面白い人やモノ・コトを発見し、都市型フェスティバルの理想的な形について考えることがあったそうです。
「いままで回ったところを地図でまとめたときに、血管みたいだなと感じたんです。我々のような立場の人間が地方に行き交って、関係した場所や拠点が増えていって、さらに刺激を求める人が行き交うようになる。そうすると、点と点が繋がっていって、大きな流れになっていきますよね。こういうことをどんどん広げていくのが、都市型フェスティバルのやるべきことなんじゃないかと思います。」
モデレーターの廣瀬さんは各地域の取り組みを受けて、札幌の都市型フェスティバル・NoMapsの今後の展望を次のように語りました。
「いや、そういう話を聞いていると、我々も北海道キャラバンやらなきゃダメだなって思いましたね(笑)。北海道にも若くて面白い子たちがいっぱいいて、いろんな地域で新しいムーブメントが起こってきているんです。それをパイプとしてつなぐことで北海道エリア全体の力を高めていくのが、都会と田舎をつなぐ都市型フェスティバルに必要なことだと思います。」
地方都市の特色を活かしながら今後さらに発展していくであろう、テクノロジーやカルチャーの祭典である都市型フェスティバル。各イベントや地域がつながり、さらに多くのイノベーションやチャンスが生まれる場所になるためのヒントが散りばめられたトークセッションでした。
執筆・写真撮影 谷 翔悟
1989年、北海道札幌市生まれ。東京と北海道を往復しながら、人と暮らしにフォーカスした映像やインタビューを制作する。
21世紀の北海道をアーカイブする音声コンテンツ「SUPER SAPPORO BROS」主宰。
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都市部のイノベーションを地方に循環させるには?
送客装置、最先端技術のショーケースとしての都市型フェスティバル
アメリカ・テキサス州オースティンで開催され、音楽や映画、技術など様々な分野が集結する最先端テクノロジーの祭典「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」を参考とするNoMaps。今セッションのモデレーターでもあるNo Maps実行委員会事務局長の廣瀬さんは、そのような都市部のイベントが地方に対してどのような影響を及ぼすのか、登壇者に問いかけました。
「都市部のイベントは、他の地域から人が集まることでイノベーションを起こしやすい状況になります。でも地方の側から見ると、都市部に人と熱量を吸い上げられることで、衰退が進んで町が寂れてしまう。そういうことを考えたときに、ただ都市部だけが盛り上がるイベントに意味があるのか?というのは疑問に思っているところなんです。都市型フェスティバルで起こったイノベーションを、どう地方に還元して循環させるのか、というところですね。」
高橋さんが事務局長を務めるCiP協議会が拠点としている東京・竹芝地区の埠頭からは、小笠原諸島行きの船が出航します。しかし片道24時間ほどかかることなどから、気軽に行ける場所とは言いづらい側面も。それでも小笠原諸島の素晴らしい魅力を伝えられないかということから、2018年9月にテレイグジスタンス株式会社がJTBやKDDIと組み、ロボットとVRを使った遠隔旅行を体験できるイベントを開催しました。
「東京はお金や人的リソースに余裕があるので、チャレンジすることで発生するリスクを許容する傾向にあります。だから新しい技術が発展するし、それを活用する設備も東京にできる。そういうなかで、地方へ送客をするきっかけとしての最先端技術を使ったショーケースを都市部でのイベントに置くというのは合理的だし、地方にとっても魅力的なんじゃないかなと思いますね。」
NoMapsも北海道全土で開催!?
地方と都市、それぞれの役割と、活動エリアを広げて交流をつなぐキャラバン
神戸のクロスメディアイベント「078」を運営する藤井さんは、アイデアを披露・実験する場は都市部のイベントでなければ多くの人に届かないことに触れつつも、実際に変化するのはそれぞれの日常や生活であることから、都市型フェスティバルの役割を次のように話しました。
「我々のイベント『078』で言えば、淡路島の農家に嫁いだ女性の団体『南あわじ農業女子』が、078に出ていただいたことから色々なメディアに拡散して、テレビ局の密着取材を受けるまでになった事例もあります。地域ならではの活動を都市部のイベントでアピールしてもらって、地域の活性化に役立ててもらう。都市型フェスティバルは、そういったポンプの役割を果たせたらいいと思いますね。」
福岡の「明星和楽」実行委員会の波止さんは、“異種交創”を探す九州一周キャラバン 「WARAVAN in Kyushu」という企画で九州一周しました。その際に、いままで行ったことのないエリアにアクセスしたことで、多くの面白い人やモノ・コトを発見し、都市型フェスティバルの理想的な形について考えることがあったそうです。
「いままで回ったところを地図でまとめたときに、血管みたいだなと感じたんです。我々のような立場の人間が地方に行き交って、関係した場所や拠点が増えていって、さらに刺激を求める人が行き交うようになる。そうすると、点と点が繋がっていって、大きな流れになっていきますよね。こういうことをどんどん広げていくのが、都市型フェスティバルのやるべきことなんじゃないかと思います。」
モデレーターの廣瀬さんは各地域の取り組みを受けて、札幌の都市型フェスティバル・NoMapsの今後の展望を次のように語りました。
「いや、そういう話を聞いていると、我々も北海道キャラバンやらなきゃダメだなって思いましたね(笑)。北海道にも若くて面白い子たちがいっぱいいて、いろんな地域で新しいムーブメントが起こってきているんです。それをパイプとしてつなぐことで北海道エリア全体の力を高めていくのが、都会と田舎をつなぐ都市型フェスティバルに必要なことだと思います。」
地方都市の特色を活かしながら今後さらに発展していくであろう、テクノロジーやカルチャーの祭典である都市型フェスティバル。各イベントや地域がつながり、さらに多くのイノベーションやチャンスが生まれる場所になるためのヒントが散りばめられたトークセッションでした。
執筆・写真撮影 谷 翔悟
1989年、北海道札幌市生まれ。東京と北海道を往復しながら、人と暮らしにフォーカスした映像やインタビューを制作する。
21世紀の北海道をアーカイブする音声コンテンツ「SUPER SAPPORO BROS」主宰。
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