カンファレンスレポート:NoMapsEDU これから求められる新しい小学校教育とは

Date : 2020/11/27

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NoMapsの新ジャンルとして今年から始まった「教育」シリーズ。
その皮切りに開催された本セッションでは、プロ野球選手を引退後、小学校を創ると発表して世間を驚かせた田中賢介さん(現・北海道日本ハムファイターズ:スペシャルアドバイザー)を招き、「田中学園立命館慶祥小学校」(2022年4月開校予定)設立にかける想いや幼少期教育の大切さについて聞きました。

また、「次世代リーダーの創出」をミッションに若者たちに世界42カ国・300件以上の海外実践機会(インターンシップ)を提供している菊地恵理子さん(タイガーモブ株式会社:CEO)にはリモートで出演いただき、肌で感じている海外と日本の教育のあり方の違いなどを聞きました。
モデレーターは、北海道と世界を「教育」と「テクノロジー」で繋ぐことを目指し、幅広い年齢層を受け入れたプログラミングスクールを開設している、株式会社シーラクンス:代表取締役社長の藤澤義博さんです。
 

理想的な幼少期教育を実現する小学校を創り、北海道への恩返しを。

小学校を創ろうと考えた理由として、田中さんは、MLBの南米ベネズエラ遠征で見た光景に、「ここがもし幼少期の教育にきちんと取り組めていたら、もっと発展した幸せな国になっていたろう」と感じたことと、直後に生まれた息子の子育てをしながら「やはり幼少期は重要だ」との考えに至ったことを語りました。そして、お世話になった北海道の人たちやファンへの恩返しに「野球指導のほかにも何かできないか」を考えたとき、理想の教育環境を創ることを決意したのです。
しかし、「学校法人の認可申請が必要なことも知らない」状態からの道のりは平坦ではなかったそう。それでも、簡単で自由のきくフリースクールにしなかったのは、「ご恩返しとして僕がやるからには、正式な認可をとって認められた形にしたかった」から。「その中で思い切ったことにチャレンジし、貢献することをめざそうと思いました」。

建物の設計やカリキュラムにも全面的に関わり、「こんなことをしたら、子供たち、どんなふうに育つかな」とワクワクしていたという田中さん、セッションの後半には、絶賛募集中の教師について、「まず、愛があることが絶対条件。その次に、子供に〝失敗することは恥ずかしいことじゃないんだよ、先生もしたよ〟と教えられる人が条件です」と、温かいまなざしで語りました。

時代は「学歴社会」から、「学習歴社会」へ。探求する学びが求められる時代へ。 

なぜ今、小学校を始めとする教育のあり方の見直しが必要なのか、その背景として、藤澤さんが、北海道が深刻な「課題先進地域」であることを説明。次いで、今年、国の教育改革がスタートし、新学習要領の導入、入試改革、英語改革がなされること、そして否応なしに進んでいく日本のIT化・国際化への対応についてへ話題が進みました。
「社会はテクノロジーと融合し、今の子たちが育つ10〜20年後には、今ある職業の半分がなくなると言われている」と藤澤さんが説明。その時代に生きるためには、現在までのような知識暗記型の学びから、知識や技能をもとに自分で考え、判断し、表現し、社会で役立てることができる学び=探求型学習が重要に。「そこで注目されている1つが、今年から小学校で必修のプログラミングです」と藤澤さん。「来年、再来年には中学・高校でも必修に。社会に出る基礎学習として、読み書き算盤プログラミング、といわれるくらいになっていくと思います」と予測します。

菊地さんも、「自分で考え行動する探求学習は大事。興味関心をより追求しようとしたら、今は地球規模で情報を取りに行ける時代。大人が子供たちのストッパーになってはいけないと思っている」と語りました。同時に、海外へ行きたがらない若者が増えていると言われる昨今でも、菊池さんの元へは「学校を休学してでも行きたい子たちが押し寄せている」と、二極化している状況を話してくれました。
 

国際社会で生きるためにこそ、必要なのは…「国語力」!=言葉で語る力。

教育とIT化、国際化を論じたセッションですが、興味深いことに3人が口をそろえて強調したのは、「国語力の強化」でした。それは、人の気持ちを汲み取る情操やコミュニケーション力を養うという面と、国語の学びを通して日本という国のことを知るという面を含めての国語力。それが身についてこそ真の国際人になれる、という論旨です。
2年間をアメリカで暮らした田中さんは、「日本はこういう国だと説明できない自分がいた経験」から、「田中学園立命館慶祥小学校では、国際教育と実践的な英語教育を行いますが、それ以上に、1、2年の間は徹底的に国語教育を行う」という方針。
奇しくも藤澤さんも国語力を身につける大切さを実感しており、2年前に日本語教師の資格を取得。「僕が外国人に日本語を教えることができたら、もっといろんなこと広がるのではと思ったんです」。

「海外に行くと、一番のメリットって自己内省ですよね」と菊地さん。「現地では、すごく意見を問われます。日本人としてどう?あなたはどう?と。おのずと、自分がなぜこういう価値観なのか、なぜここにいるのか、自分に問わざるを得ない。日本人としての自分、何々がしたい自分、を見出すきっかけなります」。まずは英語では?と思いきや、「言語ができることに越したことはないですが、行ってしまえば、生きていきたいので何とかしますよね(笑)。自分の意思を表示しないと何も進まないので」と断言。起業もそれに似ていると語り、「見る前に飛べ」という豪快なモットーを披露してくれました。

ドリームキラーに負けず、北海道から世界に羽ばたける子供たちを育てたい。

最後に、3人がそれぞれの立場から本日のテーマを締めくくりました。
菊地さんは、「より良い人類のより良い地球を作るためにも、小学校教育はないがしろにしてはいけない。こんな時代だからこそ変革期であり、こういう未来を作っていくべき、という方向づけを今ならできる」と語り、藤澤さんは自身のプログラミングスクールを例に、「プログラミングは失敗が許され、間違ったら褒めるんです。よく気づいたね。次はどうすればいいと思う?すると子供たちはどんどん興味を持ってくる。無限の可能性の芽を見つけて、伸ばしてあげるのが大人の役目ですね」と語りました。

田中さんも、「子供たちの可能性は無限。何にでもなれると確信している」と前置きし、「その子らが社会に出たとき、ドリームキラー(否定する者)が必ず現れるので、その時に、『そんなことない、失敗したってチャレンジしていくんだ!』と強い意志を持てる大人に育てたい。どう育つかは幼少期にかかっている。子供たちが北海道から世界に羽ばたいていく手助けをしたい」と力強く語りました。

 
執筆:重田サキネ

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