創造的・文化的な産業の発展による都市の活性化や、文化多様性への理解増進を目的として国際的な連携を構築するユネスコ創造都市ネットワーク。音楽分野、メディア・アーツ分野において各々ネットワークに加盟している浜松市と札幌市には、日本の歌声合成技術ビジネスを牽引するヤマハ株式会社、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の2社がそれぞれ拠点を設けています。
本セッションでは両社より、歌声&音声合成技術の開発を手掛けている担当者が登壇しトークセッションを開催しました。歌声合成技術のこれまでと最新の展望、その発展性について語り合いました。
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佐々木渉さん(以下、佐々木):もともとクリプトン・フィーチャー・メディアは海外で販売されていた音楽制作用素材を国内向けにローカライズして販売する、というようなことをしてました。完全にライセンス業務です。クリプトンがヤマハさんと一緒に仕事をさせてもらうきっかけになったのは着メロ着うたの販売でした。そこでやり取りを続けるうちに、ボーカロイドの話なんかをよく聞くようになっていったんですよね。
吉田:ボーカロイドの開発は進みましたが、全く新しいソフトなので、社内でも、どう売っていいかわからないという雰囲気だったんです。当時はまだ、人間が歌えばいいんじゃないかという意見もあり、今ほどボーカロイドの存在意義が浸透しているわけではなかった。そこで外部に活路を求めて、ここらへんのライセンス販売の部分などをクリプトンさんにお願いしようということになったんです。
佐々木:そして、いざ販売が始まり、蓋を開けてみると、当時1000本売れればヒットと言われていたバーチャル楽器カテゴリでそれを大きく上回る出荷数となり、さらに動画コンテンツなども広がりました。ミクがヒットした後、次をどう続けたらいいかをすごく悩みました。ミクが人気すぎて、どうやってもインパクトを与えられないんじゃないかと。
佐々木:ミクは明るくて可愛らしい声ということでニコニコ動画の隆盛もあり一気に人気が出て、コンテンツが増加しました。最初はガジェット好きやプログラムができるなどネットリテラシーの高い人たちに受け入れられていたニコニコ動画が、やがて中高生に当たり前に閲覧されるようになりました。それに伴って初音ミクがいわゆるオタク層ではない若い世代や子供達にも一気に浸透したと思います。
吉田:ボーカロイドを開発する上で大事にしていることは、やっぱりコンセプトです。この商品はどういう歌わせ方をさせたいかというのを信念に持って、外野からの圧力に負けない、ということですかね笑
佐々木:僕はボーカロイドを作る上で大事なのは人間関係とコミュニケーションと思っています。 特にボイスバンクように人間の声を取っていく作業は本当に単調で、長丁場で、いわゆるつまらない録音なんです。そういうときに、いかに声優さんとかシンガーに飽きられないように、機嫌悪くさせることのないように、付き合ってもらうかとか…。ボーカロイドの開発にあたってここのあたりが最も大変なところでした笑
吉田:それから現在まで、ヤマハはパソコン以外でのところでもボーカロイドを使えるようなプラットフォーム作りをしています。クラウドサービスや、ボーカロイドキーボード、iPhone/ iPad向けのアプリ、教育現場で使えるボーカロイドソフトまで展開しています。
吉田:将来のアップデートに向けてであったり、新たな初音ミクやバーチャルシンガーの制作を支えるべく、歌声合成技術や新規音声技術の開発を続けています。ただ素材を増やすというだけでなく、音声に対する自由性であるとか、新しい声のデザインというところにアプローチしていきたいなと思っています。
佐々木:また、ボーカロイドを使って作品を作ってくれたユーザーと他のジャンルのユーザーをつなぐプラットフォームやそこにともなう新しいカルチャーの支援などを、産総研のような研究者サイドと、企業側のサービスサイドの両方と連携して企画していきます。例えばkiite という視聴支援サービスなどです。技術の進化に伴いボーカロイドも音声の表現力の向上やCG技術の向上があります。そういった要素も合わせてバーチャルライブという形でアプローチしたりなどもしています。様々な形でのコラボレーションやイベント展開が広がりつつありますね。
執筆・写真 足立 岬(札幌市立大学デザイン学部 人間空間コース4年生)
本セッションでは両社より、歌声&音声合成技術の開発を手掛けている担当者が登壇しトークセッションを開催しました。歌声合成技術のこれまでと最新の展望、その発展性について語り合いました。
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音声合成技術の背景と開発秘話を語る!
吉田雅史さん(以下、吉田):ボーカロイドは2000年にプロジェクトがスタートしました。その後3年かかって技術開発を行い、2004年に最初のボーカロイド製品が発売されました。その後2007年にボーカロイド2が登場し、初音ミクが発売されました。佐々木渉さん(以下、佐々木):もともとクリプトン・フィーチャー・メディアは海外で販売されていた音楽制作用素材を国内向けにローカライズして販売する、というようなことをしてました。完全にライセンス業務です。クリプトンがヤマハさんと一緒に仕事をさせてもらうきっかけになったのは着メロ着うたの販売でした。そこでやり取りを続けるうちに、ボーカロイドの話なんかをよく聞くようになっていったんですよね。
吉田:ボーカロイドの開発は進みましたが、全く新しいソフトなので、社内でも、どう売っていいかわからないという雰囲気だったんです。当時はまだ、人間が歌えばいいんじゃないかという意見もあり、今ほどボーカロイドの存在意義が浸透しているわけではなかった。そこで外部に活路を求めて、ここらへんのライセンス販売の部分などをクリプトンさんにお願いしようということになったんです。
佐々木:そして、いざ販売が始まり、蓋を開けてみると、当時1000本売れればヒットと言われていたバーチャル楽器カテゴリでそれを大きく上回る出荷数となり、さらに動画コンテンツなども広がりました。ミクがヒットした後、次をどう続けたらいいかをすごく悩みました。ミクが人気すぎて、どうやってもインパクトを与えられないんじゃないかと。
佐々木:ミクは明るくて可愛らしい声ということでニコニコ動画の隆盛もあり一気に人気が出て、コンテンツが増加しました。最初はガジェット好きやプログラムができるなどネットリテラシーの高い人たちに受け入れられていたニコニコ動画が、やがて中高生に当たり前に閲覧されるようになりました。それに伴って初音ミクがいわゆるオタク層ではない若い世代や子供達にも一気に浸透したと思います。
吉田:ボーカロイドを開発する上で大事にしていることは、やっぱりコンセプトです。この商品はどういう歌わせ方をさせたいかというのを信念に持って、外野からの圧力に負けない、ということですかね笑
佐々木:僕はボーカロイドを作る上で大事なのは人間関係とコミュニケーションと思っています。 特にボイスバンクように人間の声を取っていく作業は本当に単調で、長丁場で、いわゆるつまらない録音なんです。そういうときに、いかに声優さんとかシンガーに飽きられないように、機嫌悪くさせることのないように、付き合ってもらうかとか…。ボーカロイドの開発にあたってここのあたりが最も大変なところでした笑
吉田:それから現在まで、ヤマハはパソコン以外でのところでもボーカロイドを使えるようなプラットフォーム作りをしています。クラウドサービスや、ボーカロイドキーボード、iPhone/ iPad向けのアプリ、教育現場で使えるボーカロイドソフトまで展開しています。
ボーカロイドの未来とは?
吉田:将来のアップデートに向けてであったり、新たな初音ミクやバーチャルシンガーの制作を支えるべく、歌声合成技術や新規音声技術の開発を続けています。ただ素材を増やすというだけでなく、音声に対する自由性であるとか、新しい声のデザインというところにアプローチしていきたいなと思っています。
佐々木:また、ボーカロイドを使って作品を作ってくれたユーザーと他のジャンルのユーザーをつなぐプラットフォームやそこにともなう新しいカルチャーの支援などを、産総研のような研究者サイドと、企業側のサービスサイドの両方と連携して企画していきます。例えばkiite という視聴支援サービスなどです。技術の進化に伴いボーカロイドも音声の表現力の向上やCG技術の向上があります。そういった要素も合わせてバーチャルライブという形でアプローチしたりなどもしています。様々な形でのコラボレーションやイベント展開が広がりつつありますね。
取材を終えて
トーク中に挙げられた「初音ミクがオタク層ではない若い子や子供にも一気に浸透した」時に高校生だった私は、「あったね!その時代!」と懐かしい気持ちで聴いていた今回のトーク。ボーカロイドの登場で様々な創作活動に花が咲き、日本の新しいカルチャーを作り上げたと言っても過言ではないでしょう。ひたすら地味な気を使う作業が開発の大半を占めることを言いながらも、今後の展望に向けて語る登壇者の皆さんを見て、製品に対する愛着を強く感じました。ここ数年のDAWブームと合わせ、これからもボーカロイドがどう発展していくか楽しみです。執筆・写真 足立 岬(札幌市立大学デザイン学部 人間空間コース4年生)