NoMaps Conference 2021 北海道大学 数理・データサイエンス教育研究センター「ニトリみらい社会デザイン講座」Presents

MITメディアラボ石井裕キーノート「未踏峰連山」

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日時
2021年10月13日(水)
13:00~14:00
会場
YouTube

大切な登山家の友人栗城史多氏を、2018年5月にエベレストで失った。それ以来、ずっと自分に問い続けてきた。なぜ人は命をかけてまで、危険な冒険をするのか、なぜ人間は、世界最高峰に挑戦し続けるのか? そしてひとつわかったこと、それは「世界記録」というタイトルの持つ魔力。それまで誰も達成できなかった偉業の、世界初の達成者として世界に認められたい、記録されたい、それを通して自分を証明したい、という人間の持つ強烈な願望。

 

しかし、「世界初」のタイトルを得るために、「無酸素」、「単独」、「北壁」、「冬季」など、極めて困難な条件の積集合を冒険の目標として掲げ、冒険の基本条件である「生還」の可能性を限りなくゼロに近づけてしまった「世界記録」の矛盾。結果的に「冒険」と「無謀」との境界がわからなくなってしまった。冒険者にも、応援者にも。

 

それでも挑戦し続ける登山家たちに、僕は深い敬意を抱く。自分には絶対不可能な、きわめて過酷な挑戦を続ける彼らに、深い畏敬の念を覚える。一方で、「どうか止めてくれ。それは無謀だから。」と本人に言えなかった自分、「祈る生還」としか言えなかった、自分への自責の念に、今も苛まれる。では一体自分は何をしてきたのか、栗城さんはそう僕に問いかけているように思える。

 

山はタンジブル。物理的に実存し、登頂が可能。エベレストという、何百万年も続いた地球の造山活動の結果として、海中から隆起した巨大な岩塊エベレストは、確実に存在し、多くの登山家がその足でサミットを目指した。世界最高峰というシンボリックなメタ情報も、世界中の登山家たちを奮い立たせた。

 

一方で、僕が25年前に夢描いた「タンジブル・ビッツ」という山は、僕の頭の中に生まれた「インタンジブル」な夢(ビジョン)でしかなかった。蜃気楼のような不確かな幻影だった。僕がそれを夢見た時点では、もちろん物理的実体はなく、その存在すら、僕自身100パーセント確信できるものではなかった。あれから四半世紀、タンジブルの概念は、HCI (Human-Computer Interaction) の世界で認知され、2019年5月に、ACM SIGCHI Lifetime Resaearch Awardを受賞させていただきました。この賞をもって、ついに僕の「インタンジブル」な夢、「タンジブル」というビジョンがついに「現実=タンジブル」になったと確信でき、深い達成感を感じることができた。

 

本講演は「造山力」の意味を教えてくれた、栗城史多君への感謝の思いを込めて、未踏峰連山を夢見、目指す次世代の若人に捧げます。

 

開催概要

日 程 2021年10月13日(水)13:00~14:00
配 信 NoMaps YouTubeチャンネル【チャンネルA】
チケット リアルタイム視聴:無料(事前登録推奨)
アーカイブ視聴:有料・期間限定(税込2,000円)
詳細・お申し込みはこちら(Peatix)

スピーカー

石井 裕

マサチューセッツ工科大学教授、メディアラボ副所長


1956年、東京生まれ、札幌で育つ。1978年に北海道大学工学部電子工学科を卒業、80年には同大学院情報工学専攻修士課 程を終了し、92年に博士号を取得。 日本電信電話公社(現NTT)、NTTヒューマンインターフェース研究所を経て、1995年、MIT(マサチューセッツ工科大 学)准教授に就任。1995年10月MITメディアラボにおいてタンジブルメディアグループを創設。Tangible Bits (タンジブ ル・ビッツ)の研究が評価され、2001年に MIT よりテニュア(終身在職権)を授与される。国際学会 ACM SIGCHI(コン ピュータ・ヒューマン・インタラクション)における長年にわたる功績と研究の世界的な影響力が評価され、2006 年に CHI アカデミーを受賞、2019 年には、SIGCHI Life Time Research Award (生涯研究賞) を受賞。

モデレーター

坂本 大介

北海道大学大学院情報科学研究院・准教授


1981年、北海道小樽市生まれ。2004年、公立はこだて未来大学卒業。2006年、公立はこだて未来大学大学院 システム情報科学研究科 博士前期課程修了、2008年、同博士後期課程修了。ATR知能ロボティクス研究所においてインターン、東京大学にて日本学術振興会 特別研究員PD、JST ERATO 五十嵐デザインインタフェースプロジェクト 研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 助教、特任講師を経て、2017年3月より北海道大学 大学院情報科学研究院 准教授。国内外の学術会議やシンポジウムにおいて最優秀論文賞、最優秀デモンストレーション賞を受賞。その他、神戸ビエンナーレ2007 ロボットメディアアートコンペティション 最優秀賞、Laval Virtual 2010, Grand Prix du Jury、2012年度グッドデザイン賞など多数。 人とコンピュータやロボットなどとのインタラクション設計に関する研究に従事。

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