「楽しくなけりゃ未来じゃないだろ」を体現する大学がここに!ー公立はこだて未来大学潜入レポート

Date : 2022/10/4

Shere :

2000年函館市に開学した公立はこだて未来大学(以下未来大学)。情報科学とその周辺の新しい領域を融合して、システム情報科学という新たな学問領域を打ち立て、来たるべき高度情報社会にいち早く対応した教育研究機関としても知られています。

未来大学はシステム情報科学に的を絞った単科大学ですが、複雑系、人工知能、情報デザイン、データサイエンス、認知科学、コミュニケーションなど、扱う分野は多岐に渡ります。この夏のNoMaps Radioでも卒業生をゲストに迎えてご紹介しましたが、カリキュラムの内容、オープンマインドな校風、多彩な教員陣など、その魅力をひと言で伝えるのは難しすぎるのです。そこで今回、NoMaps2022をプロデュースする五十嵐慎一郎が“未来”を冠する同大学に潜入、「公立はこだて未来大学ってどんな大学?」をテーマにさまざまな疑問をぶつけてみました。

未来大学の最大の特色として真っ先に挙げられる「プロジェクト学習」や、開放的な校風のシンボルともいえるガラス張りのオープンスペースなキャンパスが誕生した理由、ユニークな人材を輩出し続けている学生の実像、大学発スタートアップベンチャーなど、未来大学のこれまでと現在、そしてこれからを、片桐恭弘学長と田柳恵美子社会連携センター教授に訊きました。「楽しくなけりゃ未来じゃないだろ」の刺激的なキャッチコピーのもと、潜入レポートをお届けします。

「情報系に特化した新しい教育」先端技術のスタープレイヤーたちが作った大学

五十嵐:開学から22年になりますが、未来大学はどのような経緯でできたのか教えてください。

片桐:以前から「函館に新しい大学が欲しい」という市民の動きがありまして、数学者の広中平祐さんやまわりの若い研究者たちのコミュニティが中心となって、「情報系に特化した、新しい教育を創ろう」と大学のプランを構想したのが発端です。

今やスタープレイヤーになっているソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明さんや、フラクタル理論の第一人者の高安秀樹さんなど、当時30代くらいの活きのよい研究者たちが準備委員会に入り、先端的な議論をしながらこの大学の骨格を作り上げました。現在の教授陣でも何名かはこの最初のコンセプトづくりに関わっています。

「全てオープンだから自発性が育まれる」吹き抜けガラス張りのキャンパスの意味

五十嵐:未来大学を象徴するガラス張りで5階吹き抜けのキャンパスについて。ちょっと散歩していて思ったのですが、キャンパスの空間としての面白さやザワザワ感が僕は好きですね。

片桐:やはり「建物が人を作る」ということはあると思います。教育を実践するための環境づくりとして、ガラス張りのキャンパスの建物も含め徹底的に考えぬかれました。使い方の規定されない大きな空間があると、自由度が高く自発性が生まれ、コラボレーションやコミュニケーションが促進される。互いの活動が一望(いちぼう)できるので、気付かないうちに人と人が影響を与え合うなど、独特の雰囲気があります。

田柳:「オープンスペース、オープンマインド」を大学のスピリット(精神)に掲げていますが、ただスペースをオープンにするだけじゃダメなんです。「なぜオープンにしているか?」を踏まえた上で、空間を活かしたカリキュラムが立てられ、教育・研究活動が展開されているのがミソです。オープンな環境での活動によって、学生の精神も育まれ、教員の精神も育まれる。「オープンスペース」があって「オープンマインド」が育つという考えです。

互いの活動が一望できることはとても重要です。たとえば1年生が、3年生や4年生が何をやっているのかが見えて「3年になったらあの授業をやるんだな」「4年の卒研の指導をやってるな」とかをいつも眺められるのは、学びや感性にとてもいい影響を与えます。それをすごく意識してこの空間は作られています。

五十嵐:密過ぎないでそれぞれのパーソナルスペースもあり、一望できるだけでなくちゃんとパーソナル感を保てるようなデザインになっているのが面白いなと…。

田柳:このキャンパスの好きなところは、1人でいても孤独感を感じない点。友達が少ない人でも苦にならないのではないでしょうか。これは未来大学の魅力のひとつじゃないかな…。最近になって全国の大学でも「コモンスペース」と言って、目的や機能が一意に決められず学生が自由に使える共有の場作りを最重要視する傾向がありますが、かつては学生の居場所というのは学生食堂か図書館くらいしかなかったですよね。その点ではここはそもそも学生中心・人間中心に設計されていて、学生にも教職員にも天国みたいなところだと思います。

五十嵐:今言われて気づいたんですけどこれってコワーキングスペースですよね。さまざまな人が出入りして自由に使うコワーキングスペースが2010年代に定着したことを考えるとかなり早い。コワーキングスペースって仕事をするときに妙に落ち着くと思っていましたが、なぜこのキャンパスが落ち着くのか理由がなんとなく判りました。

片桐:先生と学生の距離が近いのも特徴です。伝統的な大学は講座制といって、研究室ごとに教授・准教授・助教がいて、大学院生と学部生がいるという、縦の序列のようなものがあって、また研究室同士の交流があまりないのですが、未来大学にはそうした伝統はほとんど存在しません。ゼミスペースもオープンスペースになっているので、教員と学生はもちろん、異なる研究室の学生や教員同士、あちこちで立ち話をしたり、合同ゼミをしたりしている光景が見受けられます。

“解のない問題に1年かけて取り組む”「プロジェクト学習」とは?

五十嵐:未来大学の特色としても取り上げられることの多い3年生の必修カリキュラム「プロジェクト学習」について教えてください。

片桐:最近ではPBL(Project Based Learning)として、グループワーク形式の課題解決型授業が全国各大学で取り入れられていますが、未来大学の「プロジェクト学習」はその先駆けで、1期生が3年になった2002年からずっとやってきたのが未来大学のひとつの売りになっています。10年前くらいから一気に広がってきた印象ですが、本学のようにカリキュラムの中心にプロジェクト学習を組み込む大学はまだなかなかないのではないでしょうか。

田柳:未来大学のカリキュラムは、当初からプロジェクト学習ありきで設計されています。3年生全員が4つの専攻コースを越えて20程度のチームを編成し、通年で課題発見〜解決手法の考案〜開発までひと通り取り組みます。通年にするのは意味があって、前期はお互い遠慮して強いことが言い合えなかった生徒たちが半年くらいで融解してきて、後期は結構キツいことを言い合ってプロジェクトを形にしていく。1年間かけて、長いスパンでひとつのプロジェクトに取り組むことができます。

何か与えられた問題をやるのではなく、解のない問題に対して何をすればいいのか?を手探りで試行することや、問題自体を探し出すことを重視しています。今、アントレプレナーシップ教育で重要視されているような能力が、こうしたカリキュラムに組み込まれているのが未来大学の特徴かと思います。

片桐:スタートしてしまえば学生主体でやるのですが、最初のテーマは複数の教員がタッグを組んで、「こんなテーマで今年はやりたい」とディスカッションして構想を練って、まず4月に教員側から学生へのプレゼン大会を行い、学生たちがプロジェクトを選んでいくのが人気投票みたいになる。だから先生たちもめちゃくちゃ真剣になるんです(笑)。

先生たちのプレゼンテーションを見ることは生徒たちにとって学びが多く「プロのプレゼンというのはこういうものだ」というのを見せることができる。でも学生が集まらなかったプロジェクトは取り潰しになるのでシビアです。最初の立ち上がり、リーダーを決めるとか、具体的な課題やフィールドを設定するとか、ある程度方向性が押えられたら、学生たちの自律的活動に任せます。自由度が高い分、学生たちも「自分たちで決めないと前に進まない」と自発的に動くようになる。迷いながらも全体の仕事の進め方、プロジェクトをマネジメントする力が段々身についていくんです。

地域の課題をアプリで解決 社会に直結する学びがここに

五十嵐:大学の特色の項目の上位に地域社会との連携や振興などを挙げていますが、具体的にはどのような活動をしているのですか?

片桐:地域に出ていって、情報技術や情報デザインで何ができるかということをフィールドワークで聞き取りして、それを元に教員や学生が「こんなことをやったらどうだろう」と、サービスのアプリなどを作って、それを使っていただくような事例が多数あります。

プロジェクト学習はじめ、教育での地域連携は開学以来、盛んに行っています。地域振興をテーマにしたプロジェクト学習も多く、例えば地域課題解決型アプリ制作に取り組む「使ってもらって学ぶフィールド指向システムデザイン」(略称すうぃふと)では、毎年、自治体や関係機関などとも連携しながら、観光、防災、町内会、給食など、さまざまな課題に取り組んでいます。その他にも、地域の医療機関と連携した「メディカルIT」のプロジェクトも歴史が長く、今年は「病院DX と地域コミュニティの創生」をテーマに、街に開かれた病院のあり方をITでどう実現するか追求しています。

五十嵐:大学の持っている技術やノウハウを活かした自治体や地域産業との連携など実際に動いているものは?

田柳:図書館や博物館、道南の学芸員の方々と連携して、情報技術で文化財のアーカイブ化や文化体験を拡充していく「ミュージアムIT」と呼んでいる研究や、地域の観光・文化財・郷土史の情報を繋げてウェブサイトを自動生成させる研究などにも取り組んでいます。函館・道南の持つ風土、歴史、文化などに密着したこうした活動は、開学当初から連綿と続いています。

地場産業の発展や革新に直接的に貢献できるものは、課題も多くまだまだこれからです。産学連携の地場経済への貢献の難しさは、函館独自の問題というよりは、世界の地方都市共通の課題です。しかしながら、地元の道立工業技術センターや企業と連携して、水産加工ラインにAIやセンサを入れていく技術開発や、水産品を壊すことなく掴むロボットアームの開発など、期待できるものが育ってきています。

片桐:「マリンIT」と称する漁業のIT化研究のプロジェクトでは、日本各地の漁師さんたちとネットワークを作って北海道発で全国規模の研究が進んでいます。「モビリティIT」という分野では、公共交通サービスの課題を解決する大学発ベンチャーとして、株式会社未来シェアという会社を設立しました。特に公共交通が成り立たなくなっている過疎地を中心地に、全国各地で定時路線バスやコミュニティバスをAIオンデマンド運行交通に置き換えていくビジネスと研究開発を展開しています。

大学発ベンチャー、GAFA、フリーランス・・・ 卒業生の進路は多様化

五十嵐:大学発ベンチャーとかファンドなどの動きもやっと日本で動き出していますが、未来大学としてのスタンスや過去の実績については?

田柳: 卒業生では、4期生の山田圭飛さんが大学院在学中に立ち上げたハコレコドットコム株式会社が、函館を拠点にシステム開発で頑張っています。開学から20年を経て、卒業生が起業したとか、CEOやCTOに就いたという話もあちこちで耳にします。

大学としては、このところAI関連での動きが活発です。前述の未来シェアは、中島秀之前学長(現札幌市立大学学長)や松原仁特任教授が中心となって作った大学発ベンチャーで、他にも複数の教員がかかわっています。さらには株式会社AlesというAIで映画のシナリオを書く事業に取り組むベンチャーも松原先生が役員に入ったスタートアップで、函館の方と組んで作った会社です。

未来大学は小さな大学で、教員は70名弱しかいませんから大学をあげてスタートアップだというよりは、教員の中で何かやりたいという機運があれば、いつでも会社は作れるし、今後も前向きにやっていきたいと思っています。

五十嵐:大学のスタンスとしては、大学で学生を成長させて「グローバルで戦える子たちを育てよう」という、昨今のスタートアップの文脈とは違う感じなのかなとなんとなく感じたのですが…。

片桐:そうですね。ザッカーバーグ(Facebook創設者)のような億万長者になる起業家を育てるというよりは、きちんとした技術力やセンスをもって、自分のやりたいことをいかに実現できるかに満足感を見出すような人材を育てたいです。最近言われるウェルビーイング(心身・文化面などで充実した人生)を見極められることが大事で、これから世の中もそのようになっていくんじゃないでしょうか。起業にかぎらず、自分なりのクリエイティビティをうまく発揮できて、社会にも喜ばれ、さらに経済的にも成功すれば、それが一番ハッピーだと思います。

五十嵐:未来大学の学生のイメージについて、お二人はどのようにお持ちですか?

田柳:全体に素朴で素直、真面目な人が多いです。大まかに分けたらコーディングギークみたいなプログラミング大好きな人たちと、もう少し社会的なことに興味のあるタイプの両方がいる感じでしょうか。地方大学の工学部や工業高専に比べて技術屋志向の人は少ない印象です。あとはデザイン、ヒューマンインターフェイスやユーザエクスペリエンス系に興味関心を持っている人など、情報技術とユーザとの接点、社会との接点に鋭敏な人が増えているように感じます。

五十嵐:この20年でIT環境を含む社会自体が変わりましたが、卒業生の進路の変化はありましたか?

田柳:20年前はまだスマートフォンもクラウドコンピューティングもない時代でしたから、最初はシステム開発会社のSEになるとか、ソニーや日立といった大手メーカーに就職するのが花形で、ここ10年はGAFA的な企業やコンサルティング会社に入る人が増えてきました。最近の傾向として、転職で経験を積むのが当たり前になっていたり、会社の知名度を気にせず中身で選ぶ人も増えていますね。自分自身で計画を立てて「3年ここで学んで起業しよう」とか、ベンチャーのCTOをフリーランスや兼業でやっている人も増えています。なかには週2日のパートタイムCTOを複数掛け持つような人もいます。

一人ではなく、みんなで、そして世界と ITの力で新しい社会をつくろう

五十嵐:これから注目されることが予想される分野は?

片桐:AIをめぐる新しい領域、データサイエンスやデジタル・ヒューマニティーズ(AIと芸術・人文学系が結びついたジャンル)に強い、比較的若手の尖った教員たちが増えてきていて、まさに未来を開くこれからの研究に挑戦しています。

田柳:例えば、今回取材いただいた人工知能でマンガの創作に挑戦している迎山和司教授はじめ、物語生成研究、自律型ロボット研究、またディープラーニングと3Dプリンティングで次世代ものづくりに挑戦する教員など、新世代の研究者たちの活躍に期待がふくらんでいます。

五十嵐:どんどん先端分野に新しい先生が入ってきているんですね!楽しみですねえ。最後に未来大学で今在学中の学生の皆さんにどんな社会人を目指して欲しいですか?

片桐:ITを技術として学ぶだけじゃなくて、ITで新しい社会を作っていく、学生の皆さんにはそういうことが出来る、あるいはそういうことを考えられる人になって欲しい。情報系の大学なので数学、工学、プログラミングなど、色々なスキルを身につけるわけですが、大事なのはその先でスキルを使ってどんな世の中にしていきたいのかということです。それも一人で考えるのではなく、未来大学が大切にするオープンマインドで、たくさんの人とコラボレーションし、解のない問題にも解を導き出せる、そういう素養を身につけて卒業していってほしい。

そして加えると国際性ですね。日本の中だけで閉じこもらず、世界で通用するような野望を持ってほしい。先に述べたように、ただ億万長者になるとかではなく、自分や社会がハッピーになる楽しい人生を送ってほしいと思っています。

======
片桐 恭弘 (かたぎり やすひろ)

1981年東京大学大学院工学系研究科博士課程情報工学専攻修了。工学博士。NTT基礎研究所、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)等を経て、2005年より公立はこだて未来大学教授。2012年副学長、2016年より理事長・学長。専門は認知科学。

田柳 恵美子(たやなぎ えみこ)

フリーランスで研究機関の広報コンサルティングなどに携わったのち、2008年より公立はこだて未来大学。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士課程修了。博士(知識科学)。専門は知識社会論、地域経営など。

学長への取材のあとはプロジェクト学習の現場に潜入!

公立はこだて未来大学では、ユニークな教育の柱として、PBL(プロジェクトベースドラーニング)型授業の「プロジェクト学習」を開講しています。毎年20〜25程度のテーマに基づくプロジェクトが立ち上げられ、3年生全員がその中から自分の興味関心に合わせたものへ参加します。

その中から未来大学らしさが溢れているプロジェクトを2つご紹介いただき、見学してきました!

アプリで地域課題を解決?!フィールドでの課題探しから実装まで一気通貫で取り組む「すうぃふと」

地域の課題をアプリ開発を通じて解決する「使ってもらって学ぶフィールド指向システムデザイン」(略称すうぃふと)プロジェクトは、学生が地域にフィールドワークに出かけ、街の人の話やデータから課題を分析し、アプリの設計や開発を行い解決を目指すプロジェクトです。

この日は中間発表に向けて3つのチームに分かれて準備中。チームごとに、観光と地域振興、公共交通、若者の生活など、違ったテーマやアプローチで取り組もうとしていて、担当教員のさりげないフォローを受けながらも、「自ら考える」という主体性を発揮している様子が印象的でした。

このあと後期に入ると、システム開発に入るとともに、地域の方々からの評価や意見を反映させて「使える」アプリへのブラッシュアップへ邁進する予定。アマツバメから取った「すうぃふと」という略称は、ツバメのようにフィールドと開発の現場をスピーディーに飛び回れという精神にもとづいています。

さらには教員の指導を受けながら、自治体や公共機関などで提供されているオープンデータの活用や、他のシステムと相互に繋げて利用していけるLOD(リンクトオープンデータ)を意識した開発など、地域社会にとって運用やコストの利便性が高く、将来的な拡張発展性を持ったシステムを追求する姿勢を学べることが、本プロジェクトの魅力です。

人工知能に創造性をもたせたい!ゲーム制作に最新の自動生成を組み込む「クリエイティブAI」

続いて向かったのは「クリエイティブAI」プロジェクト、「人工知能の技術を活用して、ゲーム制作に創造的な自動生成を組み込む」がメインテーマ。

先に紹介した芸術・人文学と情報科学が融合した「デジタル・ヒューマニティーズ」の研究成果を、ゲーム制作の世界で実用化させていくという、チャレンジングな目標を掲げています。

今年の目標は「オープンワールドのゲームをつくろう」で、『不思議の国のアリス』がモデルの世界観をテーマに設定し、「物語」「ビジュアル」「音響」「システム」の4つのチームに分かれて開発に取り組んでいました。

人工知能による自動生成ソフトなどを駆使して、チームが互いに力を合わせてゲーム開発に取り組む様子は、ビジネスの現場と変わらない雰囲気で、この経験が、将来社会に出たときに生きるだろうことがヒシヒシ伝わってきました。

「解のない問題」に、学生たちが自ら道を切り開いて解を発見していく、未来大学のプロジェクト学習。今回は2チームからその一端を垣間見ましたが、このほかにも、脳科学、医療、教育、モバイル、セキュリティなど、先端技術を活用した多彩なプロジェクトが数多く用意されています。まさに「地図がない新たな領域を切り拓く」NoMapsの精神とダイレクトに結びついた学びがここにあり、改めてワクワクする大学だなと実感しました。

「人工知能にマンガを描せる」ことで人間しかできない創作を探る

さらに学校側から「クリエイティブAIが面白いと思うなら、ぜひこの先生にも会っていってください」という紹介があり迎山和司教授の下へー。迎山教授は「デジタル・ヒューマニティーズ」の研究に真正面から取り組んでいる先生です。

近年注目が集まっている絵画やマンガ、物語や文学に代表される芸術・人文学と、画像や音声解析・人工知能などの情報学を融合した「デジタル・ヒューマニティーズ」の領域は、未来大学でも研究者が増えている分野です。

迎山先生は創作活動の本質を探る研究のなかで「人工知能にマンガを描かせる」という斬新な研究を続けています。

すでに現時点で、セリフ決めとコマ数を人が入力すれば、見開き2ページにコマ割と人物配置、表情選択が可能で、ある程度マンガを自動生成できるところまできているそう。

デモ動画を見せてもらいましたが、登場人物のセリフをいくつか書き込み、コマ数を指定するとあっという間に1ページが出来上がり、思わず「おお~!!」と驚きの声が出てしまうほど“マンガを自動生成している感”がありました。

自動で人工知能がマンガを描けるようになるとマンガ家の仕事を奪う危惧が真っ先に頭をよぎりますが、迎山先生の研究の狙いは意外にも「自動で人工知能にマンガを描かせる」ことではなく、「人間にしかできない創作の本質を探る」を探ることなのだそうです。

「創作を神秘主義的なもののままにせず、その本質に人工知能を通して近づくことによって、人工知能との共創による新しい表現ができるようになるのではないか」という先生の言葉からも、技術系大学でありながらも、人文学を新たなアプローチで掘り下げることができるという未来大学の強みを垣間見ることができました。ほんとに深いぞ、未来大!

技術を身につけ、社会で生かすための実践的な学び 新しい社会を切り拓く

実質半日の滞在でしたが、最初から最後まで約5時間(!)、ひたすら濃密なお話しを聞かせていただくことができて、最後は半分ふらつきながらキャンパスを後にー。

システム情報科学を単に学ぶだけでなく、情報技術を活用し社会と関わる手法を実践的に学び、一方で人文学的領域に新たな研究の可能性を見いだしたりと、ここで学ぶことのできる領域の多様性を実感…。

そして何よりも社会に出たときに活きる経験値を積み重ねることができるカリキュラムの存在が、この大学の最大の特徴であり、素晴らしい人材を輩出する基盤になっているのだなあと、とても感銘を受けた訪問となりました。

内容が濃すぎてここでは詳しく掲載できなかったため、はこだて未来大同窓会のnoteページに、プロジェクト学習に関する取材および迎山先生への取材の詳細と、その後に実施したはこだて未来大OB生へのインタビュー記事を掲載させていただくことに。
ここまで読んで興味を持った方はぜひこちらもご覧ください!
公立はこだて未来大学同窓会|note

未来大学の教育のあり方や活動の多くは、NoMapsの名前に込めた「地図にない領域を切り拓く」という精神と非常に親和性が高いと改めて感じました。

NoMapsはもっともっと未来大学を応援し、連携していきたい! ということで、今年、学校祭である「未来祭」で開催されるハッカソン企画「Hackathon for FUN students」成果発表会にNoMapsとして協力することにしました! 

「Hackathon for FUN students」成果発表会の詳細はこちらから▼

ハッカソンも含め、今後の公立はこだて未来大学×NoMapsの取り組みにご注目ください!