北海道大学CoSTEP「宇宙はスペースがたりない 〜人工衛星をおびやかすデブリ〜」活動レポート③

Date : 2020/01/09

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この記事は、北海道大学CoSTEP「宇宙はスペースがたりない 〜人工衛星をおびやかすデブリ〜」の活動レポートです。
活動レポート①  総集編
活動レポート②「ワープスペースに行こう!」
活動レポート③「JAXAに行こう!」
活動レポート④「講談社に行こう!」

2019年度メディアデザイン実習 課外特別演習「JAXAに行こう!」

2019年7月 メディアデザイン実習 小池隆太・川辺晃太郎・佐藤淳治・中島優花・星崎真由美

2019年7月8日、宇宙開発に対する理解を深めるため、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の筑波宇宙センターを訪ねました。JAXAは航空宇宙分野に特化した、日本で唯一の研究開発機関です。筑波宇宙センターでは、主に有人宇宙開発や大型のロケット、衛星の研究開発が行われています。今回はセンター内を巡る見学ツアーを体験した後、JAXA職員の津上哲也さんと山田淑乃さんにお話を伺いました。お二方はCoSTEP15期の選科生でもあります。私たちがNoMapsに出展する企画のテーマも宇宙なので、今年のCoSTEPは宇宙が一つのキーワードになっているように思います。

JAXAの宇宙開発

筑波宇宙センターの見学ツアーでは、まずJAXAの事業を紹介する動画を視聴した後、国際宇宙ステーション(以下、ISS)の「きぼう」運用管制室を見学しました。「きぼう」とは日本が開発したISSの実験モジュールのことです。ISSの宇宙飛行士や海外の宇宙機関と直接やり取りを行うこともあるそうで、JAXAの中でも特に宇宙を身近に感じることができる場所でした。地上にいる人と通信機器を通した会話しかできない宇宙空間では、トラブルが起きたときなどに慌てないために、日頃からのコミュニケーションがより重要になると思いました。




ツアーの最後は宇宙飛行士養成エリアを見学しました。日本の宇宙飛行士選抜試験は世界的に見ても厳しいと言われており、閉鎖環境試験は特に大変そうだと思いました。他にも無重力状態での健康維持や宇宙食、宇宙空間での科学実験など興味深い説明ばかりでした。




人間が絶えず宇宙空間で活動を行っていることは今では当たり前になっていますが、様々な学問や科学技術そして人々の試行錯誤の結果であると改めて感じました。今後も長期的に宇宙開発を進めていくためには、より多くの人に興味関心を持ってもらう必要があり、科学技術コミュニケーションの必要性を感じました。

宇宙開発の現場から

見学ツアー終了後は津上さんと合流し、展示館「スペースドーム」の案内をしていただきました。津上さんはJAXAでリサーチアドミニストレータや広報など事務系の業務を担っていらっしゃいます。津上さん自身は幼少期から宇宙に憧れていたわけではなく、大学での専攻も文系だったそうです。学生時代は会計のアルバイトもされていたそうで、将来はそういった仕事に就くと考えていた津上さん。就職活動を行った際、せっかくなら大きな仕事に携わりたい、それなら宇宙につながるところがいいとJAXAを選んだといいます。入社後、様々なプロジェクトに関わる中で宇宙を好きになっていき、今はそれを大切にしているそうです。



私たちが筑波を訪問した2日後の7月11日、はやぶさ2が小惑星リュウグウの2回目のタッチダウンに成功しました。何ともタイムリーなニュースでとても驚きました。はやぶさ2だけでなく、ブラックホールの観測画像取得や民間初のロケット単独打ち上げ成功など今年は宇宙に関する良いニュースが多いです。そういったことも企画の中で取り上げることができたらと思います。




夜は山田さんとも合流して懇親会を行いました。山田さんは企業からの出向という形でJAXAに勤務なさっている技術系の方です。現在は地球観測衛星に関する業務に携わっていらっしゃいます。事務系の業務同様、外からは見えない苦労や困難があるようですが、子供たちや一般の方に対しては夢を与えられるような伝え方を心がけているそうです。




お二方に共通していることは、一般の人がイメージする「宇宙に関わる仕事」にとどまらない、現実的な側面を知っているということです。自分もどちらかといえば夢や憧れなどのイメージしかもっていませんでしたが、泥臭くて地味な側面やもどかしさを感じるようなことなども含めて宇宙開発なのかなと思いました。

宇宙開発の広報

CoSTEPの講義でも取り上げられたPR動画や見学ツアーの冒頭で視聴した紹介動画は、見る度に宇宙開発への興味がわいてくるようなクオリティが高いものでした。しかし、そうではない動画も少なからずあるそうです。動画を作る際に心がけていることは、「ロケットの打ち上げ成功や人工衛星の技術的に優れている点」ではなく、「ミッションとそれに携わる人々」を伝えることだといいます。

また他の広報活動においても、衛星が暮らしにどう貢献するかといった、ミッションを伝えることを中心に考えているといいます。宇宙開発に関心を示さない層にはそれが特に意識して伝えるといいます。
私たちもNoMapsに向けて宇宙をテーマにしたイベントを企画していますが、参加者に何を伝えたいかをしっかりと考えなければならないと思いました。

まとめ

個人的に以前から宇宙開発や宇宙探査に興味関心があったため、筑波宇宙センターを訪問し、さらにJAXA職員の方からお話を伺うことができたことは大変嬉しく貴重な時間でした。今後、宇宙を題材にしたイベントの企画を進めていくにあたって、JAXAの広報活動など参考にできることが多々ありました。

一方で、宇宙開発の現場では煌びやかなことばかりではありません。例えば宇宙飛行士は分単位でスケジュール管理がされていますし、JAXAにおいてもなかなかプロジェクトが前に進まず、もどかしさを感じることがあると職員のお二方は仰っていました。私たちの企画では小学生を対象とし、スペースデブリという宇宙開発の負の側面も扱います。
「夢」だけでは決して語れない宇宙開発の現状を、次世代を担う子供たちにどう伝えるのか、これからも考え続け具体的な形にしていきたいと思います。

津上さん、山田さんお忙しい中ありがとうございました!