「Z世代」という言葉を知っていますか。メディアなどで一度は耳にしたことがある方が多いかもしれません。
今回のモデレーター・種市さんによると、Z世代とは、一般的には1995年から2010年に生まれた世代です。特徴としては、SDGsという概念に親しみがあることとデジタル技術に明るいことと言われています。
NoMaps2022にて、Z世代のトップランナー3人によるトークセッションが行われました。ゲストは、2022年7月にZebras and Companyに新卒で入社した阪本菜さんと、津田塾大学3年生で自身が立ち上げた株式会社Essayを経営する江連千佳さん。モデレーターには同じくZ世代の一員として、NoMaps学生担当であり、一般社団法人未完 共同代表理事の種市慎太郎さんが務めました。
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トークのテーマは「北海道大学サステイナビリティ推進機構 Presents Z世代が実践する『欲しい未来』を形にする生き方」です。ゲストのお二人の現在の活動やそこに至るまでのモチベーションの源、そしてこれからの「欲しい未来」についての話題があがりました。
■ 「NoMaps」とは?
クリエイティブな発想や技術を用いて、新しい価値を生み出そうとする人たちの交流の場。北海道を舞台に2016年からスタートした。2022年は「楽しくなけりゃ未来じゃないだろ」というキャッチコピーを掲げ、10月19日から23日までの5日間にわたり開催。地方の”お祭り”を目指し、札幌の中心部のさまざまな場所で、リアルとオンラインを併用した多様なプログラムを行った。公式サイト
目次
- 現在を形づくる過去の経験
- すぐにはできなくても少しずつ実現していきたいこと
- 2030年までに私たちが「欲しい未来」
現在を形づくる過去の経験
「Z世代が実践する『欲しい未来』を形にする生き方」というテーマで行われた本セッション。まずはモデレーターの種市さんから、トークテーマについての共有がありました。
種市「SDGsの達成目標である2030年のビジョンについてを考えていくというのが、今回のセッションの大きな建付けです。2030年といったら僕たちが30歳前後になる年でして、その頃にはどんな未来を手に入れたいのか、という話ができればと思っています」
ゲストの一人目は、今年7月にZebras and Companyに新入社員として入社した阪本菜さんです。阪本さんが働く同社は、「ゼブラ」と呼ばれる社会課題に挑むベンチャー企業が持続的に成長できるよう、支援を行っている企業です。
入社のきっかけは、3名の創業者が立ち上げたばかりの同社に、自ら問合せをしてインターンとして働きはじめたことでした。
それほどまでに、Zebras and Companyに惹きつけられた理由は何だったのでしょうか。
阪本「小学生のときに読んだ、手塚治虫さんの『火の鳥』にとても影響を受けました。どんなに栄えた文明でも行きつく先は崩壊だと思ったときに、たくさんお金を稼いで豊かになることを目指す資本主義の考え方に、あまり賛同できなくて。けれど企業活動の基盤は、資本主義で成り立っている。葛藤がありながらも、大学を卒業したら就職をしないといけないと思っていたので就職活動はしていました。
そんなある日、たまたまTwitterをみていたら、Zebras and Company主催のイベントを知りました。何気ない気持ちで参加しましたが、そこで会社のコンセプトを知り、すっかり恋に落ちてしまって……。『社会性と経済性を両立させる』というのはまさに、私のやりたかったことだと思いました」
働くことに前向きになれずにいた阪本さんが心惹かれたのは、社会の難しい問題を解決するために起業する人たちを支援する「Zebras and Company」でした。
もう一人のゲスト、江連千佳さんが現在行っている活動も「社会性」に通じるところがあるといいます。
江連「今は大学生をしながら、去年5月に創業した株式会社Essayの代表をしています。会社では I _ for MEというブランドをやっておりまして、ブランドでは『”おかえり”ショーツ』というプロダクトをECサイトで販売しています。このプロダクトは簡単にいうと、ショーツを履かなくていい部屋着です」
江連「下着の話とかって、女性同士でも話さない、今までタブーとされてきた話題でもあって。だからこそ私たちがプロダクトとして外に出すことによって、少し社会が変わるのではないかと思ったんです」
不快な悩みはたしかにあるはずなのに、声をあげるという選択肢に気づかない。そんな状況は、私たちの身近にも多く潜んでいるのかもしれません。江連さんが小さな声に耳を傾ける必要性を強く感じたのは、ある出来事がきっかけでした。
江連「事業への情熱という意味でのきっかけは、中3のときに友人を自死で亡くしたことでした。私はなんでその人の声を聞けなかったんだろうと感じてしまって。そこからたぶん、聞こえない声や、声なき声をどうしたら世の中に届けられるようになるのだろうと考えるようになったなあと思いますね」
草の根の声を届けることを指針にして、現在では自身のプロダクト販売のほかにも政策提言やアドボカシー活動にも尽力しているといいます。
すぐにはできなくても少しずつ実現していきたいこと
つづいて、ゲストのお二方が今後やっていきたいことについての話題に。江連さんは、自身が大学で勉強しているデータサイエンスに関連づけて「統計的差別の解決」について話しました。
江連「データサイエンスの中でも特に興味があるのは、統計的差別です。今の日本では、ジェンダーとか女性のデータが極端に少ないんです。それはデータサイエンティストに女性がいないから、という理由があるんですが、これを解決できるような技術力とか企画力をつけたいなと思ってます」
物事を決定していくときにはエビデンスをもとにすることが多い。けれどそのエビデンスとして使える情報の中に、マイノリティや女性のデータがないことで差別に繋がってしまう。
この状況を解決するために、趣味のデータ収集を徐々に広げていき、5年後10年後にはビジネスになっていれば、と語りました。
また阪本さんは、Zebras and Companyでやっていきたいこととして、ブランディングを挙げました。
阪本「自分たちがやっていることの価値をわかっていたとしても、一般の人たちに伝わらないと残念だなと」
説明のしにくい自社の取り組みを伝わりやすい表現へと翻訳していくことで、より多くの人に理解してもらうことを目下の目標にしていると話しました。
2030年までに私たちが「欲しい未来」
セッションの最後には、SDGsの達成目標である2030年までに欲しい未来についての話になりました。ゲストとモデレーターの3人が共通して挙げたのは、自分とは違う世代の人たちの考え方を理解していくことの大切さでした。
種市「これからの考え方はこうで、こういう考え方は時代遅れです、というアプローチをするのでは、今ある社会でなめらかに受け入れられることはできないと思っていて」
阪本「だから私たちは、今の社会が形成された背景を考えたうえで、こういう考え方もあるよっていうのを伝えていければいいですよね」
江連「対立を煽りたいわけでは全然ないですもんね。なんでその世代はそういう風な考えになったのかを自分たちも想像力を働かせる必要があるし、逆に上の世代の人たちにも同じように想像してもらうというように、お互いに想像力を働かせ合うみたいな場が必要なんだと思います」
対立構造として語られがちな世代間での考え方の違いを、お互いがその考えに至った背景を理解しようとする。対話をしながら一緒に学んでいく姿勢になることで、持続的な成長ができるのではないかという気づきが生まれるセッションとなりました。