NoMapsが展開するウェビナ―シリーズ「Deep Dialog」。私たちを取り巻く環境が大きく変化する中、これからの未来を切り開く方々をゲストに招き、今後の行動のきっかけとなる創造的なコミュニケーションの場を目指しています。
この記事では2021年8月19日配信についてレポートします。
今回はアイヌ工芸の里としても知られる北海道平取町二風谷地域で活動する作家の関根 真紀さん、そしてYouTubeをつかってアイヌ文化の発信を続ける娘の関根 摩耶さんを迎え、アイヌ文化のいま、そしてこれからについてお話を伺いました。
<ゲスト>
関根 真紀さん
関根 摩耶さん
<ナビゲーター>
服部 亮太 クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 / NoMaps実行委員会
アイヌ文化を継承する二風谷
日高地方の平取町にある二風谷は、古くからアイヌの人々が暮らしてきた地であり、現在も住民の7〜8割がアイヌにルーツを持つ方々です。アイヌの歴史や伝統が色濃く残っており、学校でもアイヌを学ぶ授業が設けられているなど、その文化を継承し、次世代へと伝える取り組みが地域全体でなされています。
豊かな自然環境にも恵まれている二風谷ですが、アイヌの伝統工芸が盛んな土地でもあります。2013年には、工芸品「二風谷イタ」と「二風谷アットゥㇱ」が北海道で初めて経済産業省の「伝統的工芸品」に指定されました。当時はおおよそ14名の職人が民芸組合に在籍していましたが、認定がきっかけとなり担い手は増加傾向にあり、現在では30名ほどに増えています。中には、アイヌ工芸をやりたいと二風谷を訪れ、地域おこし協力隊として町に移住して工芸を学び、現在では自らアットゥㇱを織り作品を制作できるようになった方もいるそうです。
伝統に留まらないアイヌ工芸
工芸作家の関根 真紀さんは、二風谷で生まれ育ちました。家業として民芸や工芸を受け継いできた家庭に生まれ、同じく工芸家であったお祖母様やお母様から技術を直に学び身につけたそうです。古くから伝わる伝統も大切に継承している真紀さんですが、「新しい試みにチャレンジしていくのが自分の役割」という考えのもと、今までにない工芸作品の制作やブランドとのコラボレーションなどを積極的に展開し、アイヌ工芸の新たな側面を切り拓いています。
近年の取り組みの一つでは、俳優の井浦新さんが手がけるアパレルブランド「ELNEST」とコラボレーションを行い、アイヌ文様をデザインに落とし込んだ商品を発表しました。緻密なやり取りを何度も繰り返し、双方が納得するデザインに仕上げたそうです。真紀さんは、昔ながらの伝統工芸を今後も継承していく一方で、若い世代も手に取りやすい現代的なものを生み出していくことも同様に重要だと語ります。その根本には、アイヌの工芸や文化を広く発信し、たくさんの人に見てもらいたいという想いがあります。
異なる文化に触れることの重要性
真紀さんのご息女である摩耶さんも、アイヌ文化の発信に積極的であり、現在は大学に通うかたわらYouTubeやメディアなどを中心に活躍しています。「アイヌのくせにアイヌを背負ってない」と自らを語る摩耶さん。重要なのはアイヌにこだわることではなく、様々な言葉や文化、価値観があるこの世界で、お互いをあたりまえに受け入れられる多様性ある社会の実現だと話します。そのために自分ができることとして、自身のルーツを活かすことや、アイヌ語やアイヌ文化を広める役割があると、活動の背景を語ります。
「いろんな人がいるこの社会が、もっと色鮮やかであっていいのではと思っている。そんな社会に、アイヌを通じてだったり、アイヌから変えていけたら」と展望を語ります。
まとめ
二風谷はアイヌの歴史や伝統が蓄積された土地であると同時に、旅行や観光で訪れる人々に対してとても開かれたコミュニティなのだそう。貴重な資料から文化や歴史を学ぶことができる施設が多数あり、食べ物もおいしく、温泉で寛ぐこともできます。ぜひ二風谷を訪れ、アイヌ文化に触れてみてはいかがでしょうか。きっと新しい学びや気付きの機会となることでしょう。