ウェビナーシリーズ「Deep Dialog」第5回レポート

Date : 2020/12/25

Shere :

NoMapsウェビナーシリーズ「Deep Dialog」では、私たちを取り巻く環境が大きく変化する中、これからの未来を切り開く方々をゲストに招き、今後の行動のきっかけとなる創造的なコミュニケーションの場を目指しています。
この記事では今年11月16日に配信された第5回目配信をレポートします。ぜひダイジェストと合わせてご覧ください。



今年10月14日から18日まで行われた「NoMaps Conference 2020」のセッションの中で、多く取り上げられたのが「これからの働き方」です。『都市から地方への”働き方シフト”のデザイン』のセッションでは、コロナ禍の影響によりテレワークなど場所を選ばない働き方が浸透した先にある、「働き方シフト」が語られました。今回のDeep Dialogはその続きとして、北海道の今後の取り組みについて考えます。

五十嵐慎一郎さん(株式会社大人代表)
廣瀬岳志(NoMaps事務局長)
服部亮太(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社ローカルチームマネージャー)
山岸奈津子(NoMaps広報担当)

都市から地方への”働き方シフト”のデザイン Part2

山岸さんは、NoMapsの「働き方セッション」で導き出されたキーポイントについて、「働き手のマインドの変化」、「働き方の変化に対する企業の対応」、「地域との化学反応」の3つであると分析します。これらの観点から、コロナ以後の働き方をより深く議論していきます。

コロナによるマインド・働き方の変化

廣瀬さんは、一部の人にとっては当たり前だった”新しい働き方”が、コロナによる制限を受けて、一般へ急速に普及・促進されたと考えます。多様な働き方を経験することで、自分にあった生き方を見つめ直す機会にもなります。
廣瀬さんは、多様な価値観が認められるようになることは、多くの人にとって良いことであると捉えています。これに関して服部さんは、自身の様々な職種の経験から、個人事業主だけでなく、企業に勤める人もその人たちなりの働き方を選べる自由を持つのが良いと考えます。コロナによって、働き方の選択肢が増え、自分なりの幸せを選べるようになったのは重要な出来事です。

五十嵐さんは、東京で不動産の会社に就職しましたが肌に合わず、コワーキングスペース作りに携わったことがきっかけで、起業することを決意しました。働き方を見直す機会として、IT化によってPC一台でどこでも働けるようになったこと、年功序列の社会体制が限界を迎えたこと、さらに震災、コロナなどを挙げています。これらをきっかけとして、「地方」という選択肢が多くの人にとって現実味を帯びたものとして捉えられるようになっていると五十嵐さんは話します。

デジタルノマド

2015年に開かれたデジタルノマド・カンファレンスでは、デジタルノマド(ノマドとは遊牧民という意味)と呼ばれる、インターネットを利用することで場所に縛られずに働く人たちが、2035年には世界で1億人を超えると予想しています。五十嵐さんはモンゴルに行った際に本物の遊牧民を見たことがあり、政府や行政から全く独立したその生活スタイルに衝撃を受けたと言います。未来の分散型社会と遊牧民が”ノマド”という言葉でつながっているのは興味深いことです。

また、服部さんは自らが個人事業主から会社の勤務に変化したことを、遊牧民的な生活スタイルから農業中心の定住的ライフサイクルに移り変わった人類の歴史的背景になぞらえ、個々人にあった方法を選択することを提示します。以上を踏まえて廣瀬さんは、好きな環境を自分で選択すれば幸せを感じられるが、そこに責任感も生まれると結論づけています。

ここでデジタルノマドに関して、視聴者から「デジタルノマドの時代、多くの日本人がより規制がゆるく税金が低い国に流れて行くかもしれない。その時札幌はどうすべきか」という旨の質問が来ました。これについて廣瀬さんは、北海道では土地から生み出されるもののポテンシャルがとても高く、それをどう自分と紐付けて生活できるかが重要であると答えます。すなわちそれは、ビジネスではない時間の価値をどう高めていくかということでもあります。これに関連して、五十嵐さんは食も重要であるとしています。北海道は野菜も水も高品質なため、飲食店における料理も美味しく、それが一つの価値であるということです。

地域との化学反応

五十嵐さんのカンファレンスでの”北海道をいい感じの島にすべき”というお話をもとに、移住促進やワーケーションなどについて議論が広がります。デジタルノマドによって、ただ移住するだけでなく、移住者と地域の化学反応も期待できるというセッションでのお話が印象的だったと山岸さんは話します。これを受けて五十嵐さんは、ローカルな街にとって建物の建設などハード面も重要だが、一人その街で何かを起こす人が入ることが最も重要であると話します。五十嵐さんが北海道ドラフト会議を始めたのも、人がいろんな街で活躍できれば、また街と人が出会うという思いを具現化するためだそうです。

道外と道内の関係性

ここで視聴者から「ニセコはオーストラリア人、長野はアメリカ人が町おこしの立役者であり、土地の付加価値の伝播には北海道外に住む人が不可欠である」というコメントが届きます。これを受けて五十嵐さんは、北海道で働きたい優秀な留学生が数多くいるにも関わらず、彼らの働き場がないことは深刻な問題であると話します。

加えて山岸さんは、北海道出身者も同様で、道内に帰ってきたい人もいるが、仕事がないので帰ってこれないことも多いとしています。五十嵐さんはこの問題について、就職と起業という2つのパターンについて分析します。フリーランスのハードルについては、現在下がっており追い風となっています。しかし一方、就職した場合は東京に比べ圧倒的に給料が低く、大きな仕事をするチャンスも下がるのが事実であるとし、道内に拠点を置く勢いのある企業が出てくる状況を作り出すしかないと考えています。

服部さんは、この一つの事例として猿払村を紹介します。猿払村は村が一つの会社のようなもので、ビニルハウス栽培で他で獲れない時期にイチゴを出荷、さらに村主体でIoT推進ラボに入って温室管理の仕組みを導入するなど、行政が仕事を作り出すのに成功しています。

まとめ

コロナの影響で、NoMapsなど多くのリアルな場でのイベントができなくなりました。しかしデジタル技術を使い、いろいろな実験ができる機会となったのも事実です。ビジネスにおいても、オンラインでさえあれば、物理的な場所にとらわれない働き方ができる職種も増えています。このような急激にデジタルシフトにより、地域に根差したビジネスさえも遠隔でできる時代が来るかもしれません。

またビジネスではなく、その町や人が好きだという理由で移住をする人も増えています。コロナの影響の有無に関わらず、多様な働き方を見つめ直すことは、一人ひとりにあった生き方や幸せの価値観を探していくことへとつながる貴重な機会なのかもしれません。
 

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