ウェビナーシリーズ「Deep Dialog」第8回レポート

Date : 2021/06/03

Shere :

NoMapsが展開するウェビナ―シリーズ「Deep Dialog」。私たちを取り巻く環境が大きく変化する中、これからの未来を切り開く方々をゲストに招き、今後の行動のきっかけとなる創造的なコミュニケーションの場を目指しています。
この記事では2021年5月11日に開催された第8回配信についてレポートします。



昨年10月のNoMaps2020では、台湾デジタルIT大臣のオードリー・タン氏をゲストに「市民生活とテクノロジーの調和」と題したセッションを実施し、多くの反響をいただきました。今回のDeep Dialogではオードリー氏の考えをより深く知るべく、『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』の著者 近藤 弥生子さんをお招きし、台湾におけるシビックハッカーの活動やソーシャルイノベーションについてお話を伺いました。共にご登壇いただいたのは「市民生活とテクノロジーの調和」でもモデレーターを務めてくださった古川 泰人さんです。

近藤 弥生子さん 台湾在住ノンフィクションライター / 草月藤編集有限公司(So Getsu To Editing Co., Ltd.)主宰
古川 泰人さん 株式会社MIERUNE 取締役 / 一般社団法人 Code for Japan フェロー
服部 亮太さん クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 ローカルチーム マネージャー / Domingo編集長 / NoMaps事務局

「小さなオードリー・タン」を宿すソーシャル・イノベーションの形〜『オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと』の著者、近藤弥生子さんを招いて

自身のスキルを社会へ還元する

オードリー氏をはじめとする台湾のシビックハッカー達と交流するなかで多くの影響を受けてきたと語る近藤さんですが、特に大きいのは「ハクティビズム」との出会いだそう。ハック(hack)とアクティビズム(activism)からなるこの概念は、ハッキング技術を駆使して社会や政治に働きかける行為や活動を指します。ネット上で情報をシェアしたり共感を表したり、問題意識を持つだけではなく、自らのスキルで貢献可能な方法を考え、実際に行動に移していくこと。台湾のシビックハッカー達はみな共通してそのような意識を持っており、とにかくオープンな思考で社会のために動いている。そんな彼らと接する中で、近藤さんも多くのパワーをもらい社会への貢献意識が芽生えたと語ります。

シビックテックコミュニティの文化と理念

台湾にはハッカー達が集うコミュニティが多数存在します。中でもアジア最大のシビックテックハッカーコミュニティが「g0v(ガブゼロ)」。 各々スキルを持ち寄って社会貢献を志す人が集まるコミュニティですが意外にもプログラマーの割合は少なく、多様な職業・年代の人々が集まっており、とてもビギナーフレンドリーで間口が広く開かれた文化だそう。
実際に「g0v」が主催するサミットでは海外からの参加者も数多く、古川さんが訪れた際には「親戚のお家に来たようなフレンドリーさだった」とそのホスピタリティを振り返ります。そのように海外からも積極的に人を受け入れる理由の一つは、「g0v」が台湾の課題解決のみを目指しているわけではないから。ある地域の問題は、他の地域でも同様に起こり得る問題です。どのような課題が存在し、どんな対処方法で解決できたかをオープンにすれば地域や国を越えて貢献できる。自分の小さな行動が思いがけない場所で役に立ち、そこからさらにフィードバックを得る。そんなかけがえのない体験が少しずつでも繰り返されていくことが、シビックテックの拡大に繋がるのではと近藤さんは話します。

市民と行政の議論を実現させた「vTaiwan」

そのような台湾において、シビックテックが生み出した成果の一つが「vTaiwan」というプラットフォーム。市民が意見を投稿したり議論を交わすことが可能であり、賛同者が一定数集まった意見に関しては行政側に対応が義務付けられます。近藤さんは、このような市民と行政が共に目を向ける討論プラットフォームの存在意義は非常に大きいと捉えており、日本をはじめ他の国でも応用することができる手法だと提案します。
古川さんによると、その「vTaiwan」やスペインで展開されているプラットフォーム「Decidim」を参考に、Code for Japanがアレンジしたものが兵庫県加古川市で導入されたり、さらにそれを授業の題材として扱う高校も出てきたりと、日本国内でも少しずつ変化が起き始めているそうです。

まとめ

その先進的な取り組みで注目されている台湾のシビックテックですが、それを築き上げているのはシビックハッカーやハクティビストたちのポジティブなマインドやもっと世の中を良くしたいという意志、オープンなコミュニティでした。このような活動は決してプログラマーやエンジニアのみが活躍する場ではありません。私たちひとりひとりが例え小さくても考え行動することこそシビックテックの本質であり、日本社会ひいては世界をより良くすることに繋がります。

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