コロナ禍は人々の働き方・生き方にも大きく影響を与え、場所を選ばないテレワークという働き方が、一般に広く認知され、浸透もし始めています。過密な都市部を避け、地方への人材移動が今後進むと予想される中で、人は、街は、どう変わっていくべきなのでしょうか。本セッションでは、地方への移住やリモートワーク普及に第一線で携わる3人にお話を聞きました。
1人目は雑誌『TURNS』のプロデューサーであり、株式会社会社第一プログレス:常務取締役の堀口正裕さん。2人目は株式会社テレワークマネジメント:代表取締役の田澤由利さん。3人目は「北海道移住ドラフト会議」代表で株式会社大人:代表取締役の五十嵐慎一郎さん。モデレーターは、Tokyo Work Design Week:オーガナイザーの横石 崇さんです。
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小樽生まれで札幌育ち、2年前に東京から札幌に戻った五十嵐さんは、移住をテーマに「北海道移住ドラフト会議」「札幌移住計画」を主催。前者は、移住者を募集する自治体を球団に見立て、希望者がエントリー、マッチングのすえ最終的にマチが「あなたに来て欲しい」と指名する取り組みであることを説明しました。
奈良出身で北見市在住の田澤さんは「テレワーク歴29年」。自他共に認める筋金入りの〝テレワークの母〟として、「まず皆さんに、テレワークの在り方が実に広いことを知ってほしい。日本を変えるものと思っていますが、現在は用途が限られていることが残念」と現状を語り、自己紹介に代えました。
企業向けにテレワークの推進コンサルタントを行う田澤さんも、「コロナで地域に人が移動するという期待感だけすごく感じますが、待つだけではいけない。テレワークの導入が進んでも、週に1度は要出勤という会社なら、社員は移住に踏み切れない。企業も変わらねばなりませんが、それら企業とうまく付き合える地域が先行してメリットを受けるでしょう」と分析。五十嵐さんは特に北海道や札幌について、「マチによって状況が違い、それぞれに解像度を上げて取り組まなければと思う。例えば札幌は、一回出た人が戻ってきたいと思う街だが、戻れない理由は、結局、仕事。バリバリ東京でやっていた人が札幌で転職を求めても、働き先が少ない。ビジネス・スタンダードを上げていくことが必須」と語りました。
その一方で、田澤さんは「仕事がないから帰れない、ではなく、今の会社を辞めずにできるのが、地域を変えるテレワーク。同じ仕事ができればどこに住んでも問題ない。だからご自由に、が理想型です。私もずっと、『会社がネット上にあったらどこからでも通えるのになあ』と思っていて」と、ここで、ご自身の会社に皆さんを「ご招待」。
「我が社へようこそ!」と映し出したのは、常時接続型のバーチャルオフィス。ここに、東京、北見、奈良のスタッフが「机を並べて」働いていることを紹介し、社員が一緒に仕事をしている部屋に「突撃訪問」。全員が、神奈川や千葉や北海道の自宅から「出勤」していました。ごく近い未来に、もっと普及するかもしれない可能性を感じる「働き方」の実例です。
や多拠点など、移住の選択肢は増えた気がする」と語り、堀口さんは「不便さや、何もないことを含めて地域を好きになることを勧めている」と、自分にとっての居心地よさや求める価値は1つではないことを示唆しました。転勤の果てに「一番いいと思った」北見に移住した田澤さんは、「すごいものがあるマチではありませんが、適度な都市機能があり、何より、ストレスがない!自分の望みに合う、バランスよい地域を探すのがいいと思います。少なくとも1週間くらいは滞在して、地域の人と話してみて」と、自身の求めるものに合う場所を選ぶ大切さを語ってくれました。
その後、堀口さんが地域の空き家問題についての話題をふり、北海道でも宿泊・滞在しながらの仕事・移住体験に活用してもいいのではと提言。五十嵐さんは、空き家を買い上げて貸している業者もいることを語り、「移住政策をしているマチではすぐに借り手がつきます」と説明。田澤さんは、空き家の活用を含め、これからの生き方、働き方の変化の中で、「北海道にはたくさんのビジネスニーズが隠れているかも」と語りました。
五十嵐さん:「北海道ドラフト会議にエントリーしてください!現地の人とリアルに顔合わせして、食べ飲みする体験を通して、いい人たちだなあ、この街いいなあと心が動くことは多いはず。ドラフトで、その出会いの場を作りたい。そうして最終的にマチからラブコールをもらうのは、ヘッドハンティングされたのと同じですよ」。
田澤さん:「働く人の9割が雇用されている日本。多くの人が会社のルールの元でしかテレワークできません。社員も声を出して会社を変えていきましょう。今こういう世の中ですよとか、国や自治体が企業にさまざまな助成金を用意してますよーとか(笑)。テレワークしたい皆さん、今が動きどころです」。
堀口さん:「移住イコール、ゴールではありません。人生を豊かにするための選択肢で通過点。住むなら居心地の良い空間でないと意味ないですから、田澤さんがおっしゃるように、まず動いてみて、五十嵐さんがおっしゃるように偶発的な出会いを楽しんでほしい。それでも迷ったら、参考にいい媒体(TURNS)あります(笑)」。
「人生の優先順位から(暮らし方を)考えてもいいのかなと思いました」と、モデレーターの横石さんがセッションを締めくくりました。
執筆:重田サキネ
1人目は雑誌『TURNS』のプロデューサーであり、株式会社会社第一プログレス:常務取締役の堀口正裕さん。2人目は株式会社テレワークマネジメント:代表取締役の田澤由利さん。3人目は「北海道移住ドラフト会議」代表で株式会社大人:代表取締役の五十嵐慎一郎さん。モデレーターは、Tokyo Work Design Week:オーガナイザーの横石 崇さんです。
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地方で働き、暮らす。そのために考えること、選ぶこと。
はじめにそれぞれが自己紹介を行い、堀口さんは「千歳市生まれで今は埼玉県在住。生き方のいろんなターン(転機)を提案する雑誌『TURNS』を通して、地域との関わり方を発信しています」と挨拶。小樽生まれで札幌育ち、2年前に東京から札幌に戻った五十嵐さんは、移住をテーマに「北海道移住ドラフト会議」「札幌移住計画」を主催。前者は、移住者を募集する自治体を球団に見立て、希望者がエントリー、マッチングのすえ最終的にマチが「あなたに来て欲しい」と指名する取り組みであることを説明しました。
奈良出身で北見市在住の田澤さんは「テレワーク歴29年」。自他共に認める筋金入りの〝テレワークの母〟として、「まず皆さんに、テレワークの在り方が実に広いことを知ってほしい。日本を変えるものと思っていますが、現在は用途が限られていることが残念」と現状を語り、自己紹介に代えました。
地域と、移住者と、企業と、それぞれの意識改革と覚悟が必要。
コロナ禍の生活変化の中で、「東京でなくてもいい」「これから地方はチャンス」という考え方が増え、地方自治体はマチ起こしの好機と期待しているように思えます。しかし堀口さんは、「僕は逆に地域格差が出てくる可能性が高いと思う」と警鐘を鳴らしました。「オンラインで東京の仕事ができるのだから、うちのマチは仕事がないから人が増えないという言い訳ができなくなります。移住者を求めるなら、ニーズに応えられるように(魅力づけ)することが重要。それをやらないで、コロナだからチャンス!だなんて、違うお話ですよと提言したい」。企業向けにテレワークの推進コンサルタントを行う田澤さんも、「コロナで地域に人が移動するという期待感だけすごく感じますが、待つだけではいけない。テレワークの導入が進んでも、週に1度は要出勤という会社なら、社員は移住に踏み切れない。企業も変わらねばなりませんが、それら企業とうまく付き合える地域が先行してメリットを受けるでしょう」と分析。五十嵐さんは特に北海道や札幌について、「マチによって状況が違い、それぞれに解像度を上げて取り組まなければと思う。例えば札幌は、一回出た人が戻ってきたいと思う街だが、戻れない理由は、結局、仕事。バリバリ東京でやっていた人が札幌で転職を求めても、働き先が少ない。ビジネス・スタンダードを上げていくことが必須」と語りました。
その一方で、田澤さんは「仕事がないから帰れない、ではなく、今の会社を辞めずにできるのが、地域を変えるテレワーク。同じ仕事ができればどこに住んでも問題ない。だからご自由に、が理想型です。私もずっと、『会社がネット上にあったらどこからでも通えるのになあ』と思っていて」と、ここで、ご自身の会社に皆さんを「ご招待」。
「我が社へようこそ!」と映し出したのは、常時接続型のバーチャルオフィス。ここに、東京、北見、奈良のスタッフが「机を並べて」働いていることを紹介し、社員が一緒に仕事をしている部屋に「突撃訪問」。全員が、神奈川や千葉や北海道の自宅から「出勤」していました。ごく近い未来に、もっと普及するかもしれない可能性を感じる「働き方」の実例です。
自分に合うもの、自分が求めるものは何か。それを選ぶ、ということ。
「どこで働くかより、誰と、何をするかに重心が変わってきている気がします」と語る横石さんは、株式会社パソナが本社を淡路島に移し、「収入の黒字より心の黒字」を追求する姿勢に転換した例を紹介。五十嵐さんも「テレワークや多拠点など、移住の選択肢は増えた気がする」と語り、堀口さんは「不便さや、何もないことを含めて地域を好きになることを勧めている」と、自分にとっての居心地よさや求める価値は1つではないことを示唆しました。転勤の果てに「一番いいと思った」北見に移住した田澤さんは、「すごいものがあるマチではありませんが、適度な都市機能があり、何より、ストレスがない!自分の望みに合う、バランスよい地域を探すのがいいと思います。少なくとも1週間くらいは滞在して、地域の人と話してみて」と、自身の求めるものに合う場所を選ぶ大切さを語ってくれました。
その後、堀口さんが地域の空き家問題についての話題をふり、北海道でも宿泊・滞在しながらの仕事・移住体験に活用してもいいのではと提言。五十嵐さんは、空き家を買い上げて貸している業者もいることを語り、「移住政策をしているマチではすぐに借り手がつきます」と説明。田澤さんは、空き家の活用を含め、これからの生き方、働き方の変化の中で、「北海道にはたくさんのビジネスニーズが隠れているかも」と語りました。
テレワークの移行は今が「声のあげどき」。人生を豊かにする選択肢を考えて。
最後に、多拠点生活や移住を考えている人に向けてアドバイスをいただきました。五十嵐さん:「北海道ドラフト会議にエントリーしてください!現地の人とリアルに顔合わせして、食べ飲みする体験を通して、いい人たちだなあ、この街いいなあと心が動くことは多いはず。ドラフトで、その出会いの場を作りたい。そうして最終的にマチからラブコールをもらうのは、ヘッドハンティングされたのと同じですよ」。
田澤さん:「働く人の9割が雇用されている日本。多くの人が会社のルールの元でしかテレワークできません。社員も声を出して会社を変えていきましょう。今こういう世の中ですよとか、国や自治体が企業にさまざまな助成金を用意してますよーとか(笑)。テレワークしたい皆さん、今が動きどころです」。
堀口さん:「移住イコール、ゴールではありません。人生を豊かにするための選択肢で通過点。住むなら居心地の良い空間でないと意味ないですから、田澤さんがおっしゃるように、まず動いてみて、五十嵐さんがおっしゃるように偶発的な出会いを楽しんでほしい。それでも迷ったら、参考にいい媒体(TURNS)あります(笑)」。
「人生の優先順位から(暮らし方を)考えてもいいのかなと思いました」と、モデレーターの横石さんがセッションを締めくくりました。
執筆:重田サキネ