2020年8月、一般社団法人さっぽろイノベーションラボが札幌市をはじめとする官民12団体で「札幌観光型MaaS推進官民協議会」を設立、同12月には北海道産学官研究フォーラムが「北海道MaaS推進研究会」を立ち上げ、MaaSの推進と発展が「社会をどう変えるのか」に興味関心が集まっています。
本セッションでは、全国的にMaaSを推進するKDDI株式会社の経営戦略本部ビジネス開発部:MaaS事業推進グループリーダー・松浦年晃さんと、北海道厚真町にて「Mobility Meets Community」をコンセプトに地域発モビリティサービス「MEETS」を展開している成田智哉さん(マドラー株式会社:代表取締役、えぞ財団:団長)を迎え、それぞれの取り組みと、MaaSが社会や北海道に何をもたらすのかを聞きました。
モデレーターは、「未来の常識を創る」をミッションにIoT インテグレーション事業を手がけている、エコモット株式会社:代表取締役の入澤拓也さんです。
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2019年からMaaS事業の戦略策定を担当する松浦さんは、「低遅延」「大容量」「多接続」が特長の5Gによって「さまざまな産業が変革される可能性」について語りました。取り組み例として、1つのアプリで多サービスを提供する実証実験や、自動運転サービスの検討例として東京の臨海エリアや沖縄で行なった実証実験を紹介。また、現在タクシー会社2社と連携して新たなサービスの創出を検討であり、「例えばオンデマンドというテクノロジー使って、タクシーを相乗りというかたちで通勤、通学、通院に使ってみる。1人あたりの料金が下がるし、不特定多数と接したくない場合にも有効」と述べ、2020年夏に、都内で同社社員によるタクシーの相乗り通勤の実証実験例を紹介しました。
次いで、愛知県一宮市で実証した「日本初の5G活用(遠隔監視技術)による無人運転での公道走行」の様子を映像とともに紹介。5Gであれば、問題の起きた車に対し遠隔制御センターでアクセルやハンドルに加えた操作が即座に反映されるため、「これまでは遠隔ブレーキのタイムラグを危険視され、時速15キロまでに制限されていた公道での走行が、5G導入で時速30キロまで許可に」なったことを解説しました。
将来的にはおそらく、遠隔監視型自動運転が可能に。「人口減による運転手不足・交通不便の時代となっても、これらの投入で効率的な移動・配送を進められる。運転の担い手がいない地域に、こういう世界観を提供していくのもミッションの1つと思っています」と松浦さん。「北海道には、日本が抱える課題と可能性が凝縮されているが、いろんなMaaSを駆使すれば、超効率的な社会の実現ができる。入澤さんの言葉を借りるなら、未来の常識を創っていくことです」とまとめました。
「例えば移住者が運転者をすると、地元の人と交流ができる。若者が高齢者と接点を持つと、昔の話や経験談を聞ける。引きこもりがちな人が運転者と話すことで少し気が晴れる。1人1人が人を助けるヒーロー・ヒロインになりうる。そんな互助の仕組みを作ろうとしています」。コミュニティが大きくなり、魅力的な人とストーリー(人生経験やライフスタイルなど)が増えれば、それがマチの観光資源にもなる、と成田さん。「地域の未来に必要なのは高度なテクノロジーだけではなく、ぬくもりあるコミュニティ。自動運転はテクノロジーとしては実装だが、それだけで人の幸福は創れない。あくまでツール。それを使って何をするか」。
成田さんはさらに過疎地を例にとって解説。「税金で各マチに自動運転を導入し、維持するためにも税金を使う。でも、乗る人がいない。ただただ自動運転がくるくる回ってる世界にしたいのか、それとも人が入り乱れ交流する世界にしたいのか。過疎地が増えている日本で何が必要か。僕はそれは、過疎地に対するサービスをビジネスにできる人、だと思っています」。
さらに話題は「移動」の活用に言及され、松浦さんは自動運転で全部プログラミングされている旅行や、寝ている間に目的地まで移動するような、ホテルを兼ねたモビリティの可能性に言及しました。そして「いろんな社会課題をテクノロジーで改善すること、それを5Gが必ずや実現できると思っています」と断言しました。
成田さんは、「生きる上で移動というものは、ものすごい大事。車がないと暮らせない北海道でのマチづくりに、モビリティは大事。北海道は課題先進国といわれているからこそ、ここでイノベーションを起こせたら、全国どころか外国に対しても、こういうアプローチを提案していけるはず。北海道がそういう意味でのMaaSのパイオニアになれるように頑張っていけたらと思います」と語ってくれました。松浦さんのお話によってMaaSのリアルな可能性を、成田さんのお話によってMaaSを活用すべき方法を教わったセッションでした。
執筆:重田サキネ
本セッションでは、全国的にMaaSを推進するKDDI株式会社の経営戦略本部ビジネス開発部:MaaS事業推進グループリーダー・松浦年晃さんと、北海道厚真町にて「Mobility Meets Community」をコンセプトに地域発モビリティサービス「MEETS」を展開している成田智哉さん(マドラー株式会社:代表取締役、えぞ財団:団長)を迎え、それぞれの取り組みと、MaaSが社会や北海道に何をもたらすのかを聞きました。
モデレーターは、「未来の常識を創る」をミッションにIoT インテグレーション事業を手がけている、エコモット株式会社:代表取締役の入澤拓也さんです。
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エコモット----〝未来の常識〟を創るべく活動。今のスタンスはMaaSの「下支え」
まずはモデレーターの入澤さんが、昨年の交通事故死者数(全国で3532人)を提示し、事故には至らないが危険になりうる可能性が、ハインリッヒの法則(ヒヤリハットの法則)的に多数潜在していることを指摘。それらを可視化・顕在化することでドライバーの教育や指導を行うシステムやアイテムを構築し、「未来には当たり前になるような革命的ITサービスを世に送り出し、人々の幸せに貢献する」ことがミッションだと語りました。MaaSに関しては「これからは衣食住に交通が加わって、人の生活に必要な4大要素となるはず」と述べ、トヨタ自動車が取り組む「e-palette」を例に、人だけでなくモノの移動の多様性が生まれる可能性を述べたほか、洞爺湖周辺で車両の位置情報を知るためのシステムやIoT監視センターによる自動運転車両遠隔監視サービスなど自社が関わる案件にふれ、「MaaSの下支えを行なっている」と語りました。KDDI----日本初の5G活用による無人運転・公道走行ほか多数の実証実験を実施。
2019年からMaaS事業の戦略策定を担当する松浦さんは、「低遅延」「大容量」「多接続」が特長の5Gによって「さまざまな産業が変革される可能性」について語りました。取り組み例として、1つのアプリで多サービスを提供する実証実験や、自動運転サービスの検討例として東京の臨海エリアや沖縄で行なった実証実験を紹介。また、現在タクシー会社2社と連携して新たなサービスの創出を検討であり、「例えばオンデマンドというテクノロジー使って、タクシーを相乗りというかたちで通勤、通学、通院に使ってみる。1人あたりの料金が下がるし、不特定多数と接したくない場合にも有効」と述べ、2020年夏に、都内で同社社員によるタクシーの相乗り通勤の実証実験例を紹介しました。
次いで、愛知県一宮市で実証した「日本初の5G活用(遠隔監視技術)による無人運転での公道走行」の様子を映像とともに紹介。5Gであれば、問題の起きた車に対し遠隔制御センターでアクセルやハンドルに加えた操作が即座に反映されるため、「これまでは遠隔ブレーキのタイムラグを危険視され、時速15キロまでに制限されていた公道での走行が、5G導入で時速30キロまで許可に」なったことを解説しました。
将来的にはおそらく、遠隔監視型自動運転が可能に。「人口減による運転手不足・交通不便の時代となっても、これらの投入で効率的な移動・配送を進められる。運転の担い手がいない地域に、こういう世界観を提供していくのもミッションの1つと思っています」と松浦さん。「北海道には、日本が抱える課題と可能性が凝縮されているが、いろんなMaaSを駆使すれば、超効率的な社会の実現ができる。入澤さんの言葉を借りるなら、未来の常識を創っていくことです」とまとめました。
マドラー----厚真町でMaaSの可能性を模索し、人材活用のコミュニティを構築
現在、北海道胆振東部地震の際に打撃を受けた厚真町に暮らす成田さんは、「Mobility Meets Community」というサービスを実証的に展開しています。「厚真町は山手線の内側面積の6、7倍あるが、タクシーはマチに1台、バスは1日3回。移動は大問題。そこで、乗りたい人と乗せられる人をマッチングすることから始めたサービスです。ゆくゆくは生活の全てを支える互助のサービスを目指しています」。この活動は、「移動が出会いの場になる」という嬉しい副産物を生みました。「例えば移住者が運転者をすると、地元の人と交流ができる。若者が高齢者と接点を持つと、昔の話や経験談を聞ける。引きこもりがちな人が運転者と話すことで少し気が晴れる。1人1人が人を助けるヒーロー・ヒロインになりうる。そんな互助の仕組みを作ろうとしています」。コミュニティが大きくなり、魅力的な人とストーリー(人生経験やライフスタイルなど)が増えれば、それがマチの観光資源にもなる、と成田さん。「地域の未来に必要なのは高度なテクノロジーだけではなく、ぬくもりあるコミュニティ。自動運転はテクノロジーとしては実装だが、それだけで人の幸福は創れない。あくまでツール。それを使って何をするか」。
成田さんはさらに過疎地を例にとって解説。「税金で各マチに自動運転を導入し、維持するためにも税金を使う。でも、乗る人がいない。ただただ自動運転がくるくる回ってる世界にしたいのか、それとも人が入り乱れ交流する世界にしたいのか。過疎地が増えている日本で何が必要か。僕はそれは、過疎地に対するサービスをビジネスにできる人、だと思っています」。
北海道でイノベーションを起こし、MaaS活用におけるパイオニアになれたら。
最後に松浦さんは沖縄での観光テーマの実証実験を振り返り、また、出身地である愛する北海道をかえりみて、「観光MaaS」の大切さに言及。観光客や外国人が移動しようとしたときに分かりやすい道案内的サービスが不十分なことを指摘し、「行きたい場所に誘導してあげられるものをMaaSで実現すれば、都市からローカルに送客もでき、人が循環し、地域の潤いにもなるはず」と提言しました。成田さんは再び、一番の観光資源は人であると語り、「都会人にとっては農業が面白かったりする。現地で話を聞き、実際に体験をする観光があってもいい。そこに到るまでをワンストップで連れて行くのがテクノロジーだと思う」と語りました。さらに話題は「移動」の活用に言及され、松浦さんは自動運転で全部プログラミングされている旅行や、寝ている間に目的地まで移動するような、ホテルを兼ねたモビリティの可能性に言及しました。そして「いろんな社会課題をテクノロジーで改善すること、それを5Gが必ずや実現できると思っています」と断言しました。
成田さんは、「生きる上で移動というものは、ものすごい大事。車がないと暮らせない北海道でのマチづくりに、モビリティは大事。北海道は課題先進国といわれているからこそ、ここでイノベーションを起こせたら、全国どころか外国に対しても、こういうアプローチを提案していけるはず。北海道がそういう意味でのMaaSのパイオニアになれるように頑張っていけたらと思います」と語ってくれました。松浦さんのお話によってMaaSのリアルな可能性を、成田さんのお話によってMaaSを活用すべき方法を教わったセッションでした。
執筆:重田サキネ