前例にとらわれず自由な発想でイノベーションを「固定概念にとらわれるな! 北海道の未来デザイン」会場レポート

Date : 2020/04/01

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新しい時代や環境の変化に対応するために、私たちは何を考え行動するべきなのでしょうか。常識や前例にとらわれないことが大事だとわかっていても、なかなか難しいものです。今回は札幌新陽高校 校長・荒井 優さん、株式会社MamaLady 代表取締役・明石 奈々さん、株式会社マネーフォワード 北海道支社長(現在は事業推進本部 本部長 兼 インサイドセールス本部本部長)・平野 龍一さんにご登壇いただき、北海道というフィールドと、固定概念を取り払って行動した実例についてお話しいただきました。

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カンファレンスの序盤で、荒井さんは「2008年7月11日」という日付をピックアップしました。

「iPhoneは売れるわけがない」と言われていた 時代と環境の変化に柔軟に対応するためのマネジメントとは



「2008年7月11日、皆さん何があったか覚えてますか?これ、Apple iPhone 3Gの発売日なんです。当時、僕はソフトバンクの社長室に入ったばっかりのときでしたね。」

当時、多くの携帯電話アナリストは、日本ではiPhoneは流行らないだろうと予想していました。日本の携帯電話を使っていた女子高生って、すごい速さで物理キーボードを操作していたため、その層がフリック式の入力形式に移行することはないだろうと、多くの専門家が言い切っていたのです。さらに、その直後の2008年9月には”リーマンショック"と呼ばれる金融危機が発生します。

「だから当時、ソフトバンクはiPhoneなんかにリソースを割いて、そのうえ参入直後にリーマンショックがあったから、きっと潰れるだろうと言われていたんです。でも結局、日本製の携帯電話メーカーはほとんどなくなって、後発だったソフトバンクは生き残っている。北海道も同じように日本の歴史のなかでは後発ですが、No Mapsのようなイベントを通して技術革新やデジタル化推進を、広い土地で取り組んでいく必要がありますよね。」


平野さんは、マーケットの常識や概念が刷新されるスピードが早くなっていることに触れつつ、それに対応するためには若い人がチャレンジできる環境を作り出すようなマネジメントが重要だと、自身の経験を交えて話しました。

「僕は公務員だったんですが、そこから転職した先のすごく小さなベンチャー企業で大きく人生が変わったなと思っているんです。当時の僕は24歳で、社長は27歳ぐらいだったんですが、僕がどんなに大きなミスをしても全く怒らないんですよ。だからこそ7年間、萎縮せずに常にチャレンジし続けることができたんです。

現代社会では確実な勝ちパターンなんて存在しないので、トライアンドエラーを繰り返す必要がありますよね。だから、過去の延長線上に未来はないと僕は思うんです。マネーフォワードで一緒に働くメンバーにも、『昨日のスクリプトは今日変えよう、失敗しても責任はすべて僕が取る』と言っています。」

人脈ゼロから新商品提案!?不可能を可能にした固定概念にとらわれない発想


株式会社MamaLadyの明石さんによる札幌のママ会イベント「ママレディパーティー」ですが、なんと東京・GINZA SIX最上階のグラン銀座を貸し切って開催したこともあるそうです。しかしホールレンタルはもちろん、アポイントを取ることすら難しいグラン銀座を抑えるために、明石さんは固定概念を取り払った方法でアプローチをします。

「GINZA SIXは銀座の超一等地にあって、最上階のグラン銀座はハイブランドの新作発表会とかで使われるような会場なんですよ。そんなところでママ会なんて前例がないし、取り合ってもらえないんです。じゃあどうすればいいかと考えて、一本電話をかけました。『グラン銀座で結婚式を挙げたいんですけど、担当の方にお会いできませんか?』って。
式の話をしにいくという形で時間を作ってもらって、バッグにはぎっしりママレディパーティーの資料を入れて、『ママ向けにこんなイベントをやりたい、こんなことしたらママ達はもっと輝くはずだ』と思いを熱く語ったところご興味を持っていただいて、会場が借りられることになったんです。」

ママレディパーティーでは大塚製薬株式会社の協賛により、オロナミンCやカロリーメイトが配られるとか。さらには2019年11月、明石さんの発案により東京・原宿SHONPYと大塚製薬のコラボレーションで、タピオカ入りのオロナミンC「オロタピンC」が発売されました。しかし明石さん、最初は大塚製薬とは何の人脈もなかったと言います。

「『もしもし、株式会社MamaLadyの明石と申しますが、オロナミンCが大好きなのでイベントに協賛してください』って、お客様相談室に電話をかけたんです。その時は何もなく終わったんですけど、何度も熱い想いを伝え続けたところ、5回目ぐらいでやっと担当者につないでいただくことができました。」



控室で『世界を変える新たな起業スタイル 社会起業ピッチ大会』に登壇する松田五月さん(さっぽろ社会起業家零ONE塾2019 塾生)に事業内容をプレゼンしてもらったことから、荒井さんはあることに気がついたと話します。

「松田さんは札幌でベビーカーのシェアリングビジネスを企画しているって言っていて。事業プランを聞いて、僕も平野さんも上手くいかないんじゃないかなって思ったんです。でも、その場にいた女性2人は『わかる!そういうの欲しかった!』って共感していた。そこで、我々が男性的な感覚だけで考えてしまっていたことに気づいたんです。これからの北海道は、そういった視点がもっと必要になってくるだろうなという感じがします。
No Mapsの登壇者も男性がほとんどですよね。つまり、北海道のビジネスシーンのジェンダーバランス自体が偏ってしまっているんじゃないかな。」

実際に北海道で起業した明石さんも、北海道の女性起業家はそう多くないイメージがあると言います。

「実際にはけっこういるんですけど、少しハキハキしているだけで『前に出すぎている』なんて言われたりしますね。私は自己資金で会社を作ったんですが、『どこから資金を出してもらったんですか?』って聞かれることも多いです。言葉にはしなくても、そういう想像をされていたり。
私、最初にたった25万円だけの資金で会社を作ったんです。そのくらい前のめりにやれる環境や雰囲気がどんどんできるといいですね。」



北海道で実際にアクションしている3人の体験談や実例を聞ける貴重な機会に、会場には多くの参加者が詰め掛け、追加の席も足りなくなるほどの大盛況に。新しいイノベーションがうまれるきっかけや、北海道の固定概念を刷新していく種まきとなるようなセッションでした。
 

執筆・写真撮影 谷 翔悟
1989年、北海道札幌市生まれ。東京と北海道を往復しながら、人と暮らしにフォーカスした映像やインタビューを制作する。
21世紀の北海道をアーカイブする音声コンテンツ「SUPER SAPPORO BROS」主宰。
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