ウェビナーシリーズ「Deep Dialog」第1回レポート

Date : 2020/07/17

Shere :

NoMapsが新たに立ち上げたウェビナ―シリーズ「Deep Dialog」。私たちを取り巻く環境が大きく変化する中、これからの未来を切り開く方々をゲストに招き、今後の行動のきっかけとなる創造的なコミュニケーションの場を目指しています。
この記事では6月24日に行った初回配信についてレポートします。ぜひ下記リンクのダイジェストと合わせてご覧ください。



今回のテーマは「学校・教育」。新型コロナウィルス感染症拡大は子どもたちや学校教育へも大きな影響を及ぼしました。長期化した休校や教育環境の変化によって、私たちは今、教育の格差やそもそも学校の意義とは何か、という問いに直面しています。

そこで今回は、教育現場に携わるお二人をゲストにお迎えし、これからの学校、そして教育のあり方について対話を行いました。
 今村 久美さん(認定NPO法人カタリバ代表理事)
 荒井 優さん(札幌新陽高校 校長/東明館中学校・高校 理事長)

開催詳細&登壇者のプロフィールはこちら
 

オンラインの可能性と見直される学校の機能

新型コロナ感染症拡大によって全国で休校措置が相次ぐ中、子どもたちの学習と居場所の支援のためにオンライン上のフリースクール『カタリバオンライン』を立ち上げた今村さん。オンライン学習環境を経験した家庭からは、平日日中も(学校が始まっても)利用したい、利用を継続したいという声が届いたことで「学校に行かなくても学べる・可能性がある、という考えが広がるかもしれない」と言います。今後は消極的な理由による不登校ではなく、主体的にオンライン学習を選択する”積極的不登校”が出てくる可能性を感じているそうです。
その一方で、学校教育が担っている機能の重要性に改めて気づいたとも振り返ります。声の上げられない子どもたちを取りこぼさないためにも、「健康保障」「(家族以外の他者との)関係保障」「学力保障」の3つの点で、学校は大切な社会的仕組みだと言います。

問われる学校教育

札幌新陽高等学校校長の荒井さんは、一斉休校の後すぐにオンライン在宅学習を実施。全国に先駆け、入試もオンラインで行うことを発表するなどその教育改革が注目を集めています。在宅学習に一定の効果を感じながらも、改めて「学校とは何なのか」を日々問い続けているそうです。
荒井さんは、コロナの有無にかかわらず「教育の課題は本質的には変わらない」と言います。例えば、コロナ前の福岡教育大による調査によって明らかになった、中学生の3割が小学校4年生の学力を満たしていないなどの深刻な「学力格差」。一億総中流ではなく、現実では階層が分かれてしまっていることを認識する必要があります。また、世間一般は偏差値の上位層だけを指して「学校」としてしまいがちです。しかし学校の基本的価値は学力関係なく全ての人にとって大切であり、認識を変える必要があると言います。
 

学校機能の合理・非合理

学校教育について外部からは「音楽や体育など、無駄なことばかりやっている」という声も多くあると、今村さんは言います。さらに今回の新型コロナ感染症拡大への対応をきっかけに、学校教育の合理化に向けた議論は盛んになると予測します。これに対し、先述の3つの学校機能(健康保障・関係保障・学力保障)に触れ、心や関係性を育てる場でもあり、経済的な格差に左右されず文化資本・教育資本を子どもたちに提供するためにも「学校を学力を上げる場所としてだけ捉えるのは拙速では」と警鐘を鳴らしました。
荒井さんはこれを受けて、「過去30年で社会の実装が変わってきたことが学校にはね返っている」と言い、働き方や価値観など本来見つめ直す必要があったことがコロナによって露見し、日本の組織的な考え方や、そこで働く先生方のジレンマなどをあげつつも、非合理的にやっていいこと、合理化した方がいいところを見極めることが大事だと指摘しました。

 

まとめ

お二人の出会いは、2011年東日本大震災の被災地だったそうです。現地で子どものたち学びの場を作った今村さんと、復興支援の財団を作りサポートするために動いた荒井さんは、共通して「当時の経験が今に繋がっている」と言います。重要なのは緊急時に対応するための「日常」であり、日頃の弛まぬ変革と関係性づくりは「非常時」に顕著に結果となって現れる。これは、教育に関わらず、どんなことにも通じると感じます。
        
  
 
 

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